楽器本体

ショップオリジナルギター(ストラトタイプ)のPU調整

2019年 04月 14日 21:41 | カテゴリー: 楽器本体
2019年 04月 14日 21:41
楽器本体

最近ちょこちょこ顔出す楽器屋さんのK楽器さん。面白い店員さんと厳選された楽器群がお気に入りなのです。そんなある日のこと、何気なく覗いたフロア、ここには売れ筋の低価格帯からミドルレンジのスタンダードなギター&ベースの売り場で、初心者から大人のカムバック世代と幅の広い層で人気です。

そこで目に付いた1本の、というかカラーも含めて7〜8本のストラトタイプのギターが1コーナーを占めていました。

それがこれ↓

https://bit.ly/2V24R8i

フジゲン製の10万クラスなので、まあ悪くないギターだな、くらいに見てると、なんとK楽器さんのオリジナル企画のギターで、木材から選任スタッフがわざわざ選んだもの(詳しくは上記のリンクにて!)。一番目に付いたのはトーンノブにくっついていたポップに「Pull 3シングル(All PUだったか?)」と書いてある。これ、自分のメインである赤紫と同じ配線(ただしリアハムはなし)で、5点セレクターのポジションが1と5でフロント+リア、ポジション2〜4でフロント+ミドル+リアがパラレルで鳴るというもの。昔調べたことがあって、出どころはどうやらmoonの考案した配線らしく、今では割とメジャーな配線です。

ところがですね、さすがに吊るしのギター(メーカー出荷状態)ですと、もちろん調整されてはいるんですが、普通のストラトと同じ状態、つまるところ、オリジナル配線である3シングルの良さが全く出ていないわけです。まあ、フジゲンの調整がどんなものかととりあえず試奏してみました。

やはり見立て通り、素直な良いギターで極薄ウレタンが効いているのか、ボディの鳴りがとかく良いのです。普通のストラトとしてなら本当に鳴りの良い「普通のストラト」です。で、3シングルを試すと、??な感じでフロントとリアのハーフトーンとあんまり区別がついてないのです。

 

店頭品を調整してみる

ここで面白店員その1君に無理をお願いして、+ドライバーを借りて調整してみます。この3シングルの調整方法は以前にご紹介した通りです。およそ10分程度、ピックアップだけの調整です。

まあ、自分のギターに良く似た音が出ます。両方のハーフトーンと3シングルがちゃんと区別のつく音です。

で、早速面白店員その1君に弾いてもらうことに。彼はジミヘンのLittle WingやSRVなどのフレーズを巧みにこなしながら10分くらいは弾いてまして、「ここ最近で一番弾いたかも」といいながらお気に召した様子。ちなみに彼はリペアーマン上がりで、自分が売ったギターにはちゃんと自身で調整してからお渡しする律儀な職人気質の持ち主。

で、もともとついているPUもフジゲン製のスタンダードなもので、ちゃんとビンテージの味をストレートに表現できるPUです。自分ではカッティング用に詰めたセッティングであるものの、彼のようなブルース系のフレーズにも、指のニュアンスがダイレクトに出てくるこのセッティングに夢中になった様子。

「これはいいですね。あんまり売りたくないかも(笑)」なんて冗談まじりだったのに、一週間も経たないうちに売れてしまったそうです。

 

意外な発見

この3シングルの音は前述のように、もともとはカッティングの音を追求した結果だったのですが、結構ニュアンスが出るのかと新しい発見でした。テクニカルなフレーズにおいて割とフロントやフロントハーフなんかで良く耳にする音です。彼もその辺をよくわかってて、3シングルとの比較をしてました。

3シングルは全部のPUが鳴るので、フロントのふくよかさ、リアのベルトーン、ミッドのガッツあるアタック感が全て相まって出てきます。それは普通の5点セレクターだけでは出ない音です。特にハーフトーンではイマイチな時も3シングルなら完全にハーフトーンと思える音を醸し出します。

ストラトの調整においては、リペアーマンの中にも考え方や好みがいくつかありまして、特にフロントは「下げた方が良い」という方と「上げた方が良い」という方と真逆の意見があります。これは前者がこもることがないニュアンスが出しやすいセッティング、後者がハムバッカーのように弦の振動をいっぱいに捉え、パワーを得やすいセッティングで、どちらも有りと思います。そして大体の吊るしのギターは、割と後者であるセッティングが多いのです。1弦よりも太い6弦の方がパワーがありますよね?

今回の3シングルのセッティングはもちろん前者でありニュアンスがダイレクトに出るもので、あとはアンプの音作りでもずいぶんと出音も変わる、結構万能で有りながらテクニックが要求される玄人好みのセッティングと言えます。

なので、クランチな音でリフを刻みながらオブリガードを入れて行くようなブルース系のギタリストとか、僕のようにカッティングにこだわりトーンを自在に使い分ける、あとは俗にいうピッキングニュアンスで歪みをコントロールするなどいくつかのスタイルが考えられると思います。

一聴して、吊るしのギターとは出音が違い、ギター本体が1ランク上の機種に感じて、まるで自分が上手くなってしまった感覚になることでしょう。

 

通常のストラト配線でも効果あり

このセッティングはなにも3シングル時だけ良いのではなく、通常の5点セレクターのストラトでも効果があります。もともと、ハーフトーンで思った音が出ないと試行錯誤しつつ行き着いたセッティングですので、どのPUポジションでもニュアンスがはっきりします。特にフロントハーフとリアハーフがちゃんとトーンの差を持ちます。前述のパワー系セッティングでは、意外と両方のハーフトーンにあまり差が出ません。ミドルPUの高さがフロントとリアに及ぼす影響が大きいからです。

もちろんパワー系のセッティングが悪いというわけではなく、言い換えるなら各PUで弦振動を確実に捉える弦に近い高さのセッティングということです。そして吊るしのギター(工場出荷時の状態)は、そこから軽く落としたところでブーミーにならず、ソロだろうがかき鳴らしだろうがどんな弾き方でも弦振動を捕らえられる高さと言えます。各PUを個々に調整するのでハーフトーンを意識したバランスではないというだけです。

ですから、ハーフトーンを多用する方はもちろん、ニュアンス系のギタリスト向けであるので、通常配線のストラトでも試してみて欲しいセッティングなんです。ギターの性格が変わったと思えるくらいに音は変わります。