リペア

Pacifica112Vの調整

2018年 12月 06日 21:13 | カテゴリー: リペア
2018年 12月 06日 21:13
リペア

pacifica.jpg

調整自体は何本も経験がありますが、Sound Magicianでご紹介するギターの調整記事は2本目です。

今回は友人より借り受けました、Pacifica112V(初心者向けエントリーモデル)の調整です。

なんやかんやでフルメンテとなったPacificaくん。

1度、別な友人の元にあったのですが、特にどこを触ったなどもないでしょうから、基本的には吊しの状態のはず、と思っていたら、意外といじっている感じでした。

もっとも、僕が仕上げたい音を出すには、セッティングが全然違います。

ですので、ピックアップだけですむのかと思いきや、なんか弾きにくいので、全体を見て調整しましたので、フルメンテの手順一例として記したいと思います。

 

1. まずは視認します。

見るところはたくさんあります。
 

音の詰まり

これはいろいろな原因があります。

まずはネックの状態。反っていないかどうか。割と良い状態ですが、軽く起きている順反りです。

次に、弦高。ビンテージタイプの6点シンクロですので、各弦ごとに高さが調整できます。ところが、指板のRと弦高があってなくて、弦がフラットな状態。弦高が低くて音が詰まっています。

そしてピックアップは、ポールピースがほぼ指板の高さと同じで確実に磁力で弦振動を殺しています。近すぎるんですね。しかもリアハムがフロントとミッドのシングルより低いと言うより、シングルが高すぎる状態でした。
 

ブリッジ

裏のスプリングが2本がけで、スプリングハンガーを締め上げてボディにベタ付けの状態。アーミングの軽さを求めてこのセッティングだと思うのですが、これだけ締め上げるとスプリングが伸びかねません。本来の3本に戻してシンクロに良くある軽いフローティング状態にします。弦が切れるとやっかいですが、チューニングの回復のためにアップを使うのはストラト使いが良くやる技です。ジミヘンなんかもやってますね。

もう一つ、弦高が指板のRに合っていないため、イモねじが飛び出すぎて、手に怪我しそう。
 

ピックアップ

これはハーフトーンの音を綺麗に出すセッティングです。後述しますが、Pacificaくんは通常のSSHで、コイルタップ時にブリッジ側のコイルが働くようです。ですので、基本的には「PUの高さ調整の勧め S-S-H調整編」とやり方は同じですが、少々アレンジはありそうです。
 

ペグ

トルク調整は6連どれもが均一で調子がいいです。ただ、ペグを固定するブッシュねじが手で回るくらい緩んでいるので、増し締めです。
 

電気関係

今回は借り物ですので、アッセンブリーはいじりません。

 

2. トラスロッド調整

trassrod.jpg

まずは弦が張ってある状態でネックを見て、確認後は弦を緩めて、ネックの反りを直します。Pacificaくんはヘッドにトラスロッド調整のふたがついていますので、それを取って、順反りですからレンチで時計回りに回します。新しいギターですのでトラスロッドにも十分な余裕があります。

新しいギターの場合は多少古い弦でもちゃんとチューニングを元通りにしてネックを確認します。

 

3. 仮のブリッジ調整

弦高調整はネックが正常じゃないとできません。先にネックを直したので、今度は弦高です。で、ブリッジがフローティングだと高さが変わるので、まず、スプリングを3本に増やしてスプリングハンガーを緩めます。

また、スプリングのかけ方でも張力は変わるので、フロイドローズと同じ両端を斜めがけにしました。そこでハンガーの6弦側を気持ち締めます。これは6弦側の方が張力が大きいための調整です。

もう一つ、6点止めのシンクロなのでフローティング時に6本のねじの頭が可動域を殺す場合があるので、軽く緩めておきます。ねじの高さを均等にそろえておきます。

このブリッジができたところで、新しい弦を張ってみて、ざっくりチューニングしてスプリングハンガーでスプリングの張り具合を調整します。人それぞれだと思いますが、自分は1弦が半音上がる程度にフローティングの調整をしました。

 

4.  仮の弦高調整

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フローティングが決まったら、そのブリッジに合わせて弦高調整です。基本的なところはボディエンドからネックを見て、指板のRに合うように調整します。弦の太さもありますが弦の下側をRに合わせるようにします。

弦自体はRに沿いますが、太さがあるのでやや6弦側が高く感じるかもしれません。ただ、Pacificaくんは1弦と6弦の駒のイモねじが2~5弦のものより短いため、調整範囲は狭くなります。1弦と6弦を合わせてから2と5弦、3と4弦と言う風に内側に調整していくと良いでしょう。

軽く弾いてみて、たとえば1弦のチョーキング時に2弦の指への乗り具合とかを見ながら微調整していきます。

 

5. オクターブ調整後に本格的チューニング

ブリッジをフローティングにしたことや弦高が変わったことで、オクターブ調整が必要です。フローティングを加味しながらチューニングを正確に詰めていきます。

チューニングのやり方は以前フロイドローズのところで書いた「ファインチューニング」を参照してください。

チューニングが終わったら、オクターブ調整に入ります。

開放弦を使うやり方もありますが、自分は12フレットの押弦とハーモニクスでメーターを見ながら合わせます。12フレットのハーモニクスが高い場合、ブリッジの駒を後ろ側に下げます。つまり時計回りにサドルのねじを回します。少々チューニングが合っていなくても、メーターの触れた位置が同じところであればOKです。

オクターブ調整が済んだら、チューニングを完全に合わせます。フローティングのスプリングの張力がうまく釣り合ったところならチューニングが合いますので、根気よく合わせます。

 

これでひとまず、外装面は完了です。

ん~、めちゃめちゃ弾きやすくなった!エントリーモデルでもここまで詰められるものなんですね。アーミングしてもチューニング狂わないし、ばっちりです。

 

6. 最後にピックアップです。

front_mid_pu01.jpg

調整しようとしたらちょっと違和感を感じました。何だろう?と思ったらフロントとミッドのシングルの間隔がせまいんです。しかも、ヤマハのHPに書いてました「ピックアップセレクターの4ではリアハムが自動的にコイルタップします。」ということなので、調べたら(当然のことながら)ポールピース側(ブリッジ側)のボビンが効きます。

そして前述した違和感の正体は、ミッドがちょうどシングル1つ分上に上がっていたことです。リアハーフは遠い分、フロントハーフは距離が狭い分、リアハーフもフロントハーフも思った音がしません。

まあ、Fenderの音に慣れすぎたというか、これはこれで詰めるしかないです。音は若干違うのですが、前述の「PUの高さ調整の勧め S-S-H調整編」をベースにするのは変わらずで、後はピックアップの癖に合わせて少々アレンジします。

pu_after.jpg

リアとミドルが遠いので、リアハーフでも割とキンキンします。ましてやFenderとの違いはリアPUがまっすぐ(つまり斜めじゃないし、ハムバッカーだし)なのもあります。ミッドを上げてふくよかさを出そうとしても今度はミッド単発がブーミーに鳴ってくるので、そこの妥協点を見つけます。それに合わせてフロントを調整し、フロントハーフが決まるようにします。

エントリーモデルでアルニコVの特性もあってか(ビンテージ系のPUではないスタンダードなパワー系)、今風のシャキシャキとした音が出ます。このフロントハーフが普通のFenderのリアハーフのような堅さで、音が抜けます。こっち(フロントハーフ)がいいな。MXRのダイナコンプのようなパッコーン系コンプが合いそうです。

 

ともあれ、これでオンリーワンなギターになりました。まあ、6万~10万くらいの吊しのギターにも負けることはないでしょう。この音なら友人も喜んでくれるはず。あとは、自分のエフェクターを決めてちょっと録音してみます。