残響系

昨今のディレイっておかしくない?

2018年 12月 03日 10:42 | カテゴリー: 残響系
2018年 12月 03日 10:42
残響系

コーラスに続いて、いろいろと物色しているものにディレイがあります。これもなんだかんだと中古品(ビンテージの部類にぎりぎり入るくらいの80年後半~90年台もの)に目が行きます。

いわゆるデジタルの初期ものが好きですね。アナログはアナログで好きなんですが、古いものですとやっぱりディレイタイムが短いのがネックです。それとあって欲しい機能は「Trail(スイッチを切ってもディレイが残る)」機能ですね。でもこれは新しいディレイにしかない機能ですのであきらめるとすると、自分がこだわっていた電子スイッチもいらなくなります。機械式スイッチでもターゲットに入ります。そして、デジタルでもアナログの音質を持ったものやアナログでもタイムの伸びたもの、昨今流行のミニケース系や中華系などの台頭で選択肢は広がるばかりです。

いくつも試奏を繰り返していると「はて?」と気がついたことがあります。それはディレイ音が昔と違うんです。

 

一昔前の遅延素子からは進化しています

当時使用されていたディレイチップと言えば「MN3007」などのBBDですが、こうしたメジャーどころがほぼ生産完了となり、作り手側としては対策する必要がありました。代用のチップを使うことになるわけですが、その代表的なチップが「PT2399」とか「MC4107D」というもの。自身、電子部品に詳しいわけではなく、メーカーのサイト等でも表記されているところもあるので知っただけですので、これ以上は書けないです。

かたや、大手メーカーによるカスタムDSPなどのオリジナルチップを持つ方向性も出てきています。こちらはもちろんデジタルです。ですからハイビット化の方向へ行くのでデジタルならではのリアルなディレイ音、またフィルターやトーン回路を付与することでアナログやテープなどのディレイ音質を醸し出す、もちろんモデリングなどの膨大かつ高速な演算処理をこなすDSPであるわけです。

このように時代とともに進化するテクノロジーで、過去の継承も、新しい進化も遂げているディレイが様々な形で出てきています。

 

何が変わったの?

そう、問題はその音です。ディレイという枠の中では「山びこのように音を繰り返す」と言う基本性能には全く問題がないのですが、音質に変化が生じています。アナログのような少々こもった返し音、テープのような揺れを生じる甘い音とか、デジタルのように原音に忠実なはっきりした音などの特長的な音質はさておき、本題はその返し音の「返り方」です。

古いものから新しいものまでいくつも試しているのですが、新しいものでは特に前述の「PT2399」を積んだものがそう感じられるのです。どうも調整がしにくく、バシッとセッティングが決まりません。「なんかぬるい」という表現しかできないのです。

chuka_delay.png

注意深くディレイ音を聞くと、どうも返りの1発目の音量がでかくて2発目以降が小さいのです。これは図を見てもらうと早いです。

昔のディレイ(アナログディレイやラックのデジタルディレイなど)は、ディレイの返し音が割とそろっており、きれいに減衰します。ですからFeedback(Repeat)を長くとっても、Delay Levelで調整しながら、原音に対してきれいな減衰が得られました。ですから、ロングディレイでも原音に対して気持ちよく(レベルを押さえた状態で)返り音がつくので、早弾きなどでもちゃんとフレーズが聞こえた上でのきれいなディレイ音の減衰が得られたのです。

ところが、昨今のディレイでは返し音の1発目(つまり原音から2発目)の音量が大きく、返し音の2発目(原音から3発目)の音量が小さいのです。これは図中に示していますがDelay音を基準に考えるとFeedbackの調整がやりにくいだけではなく、ディレイレベルも調整しにくいものとなります。

原音を基準に考えると、ディレイ音が調整しにくいだけでなく、たとえば、ショートディレイ(およそ200~300msくらい?)で早弾きしようものなら、原音と原音からの2発目(エフェクトの1発目)の音量が近くて、ぐちゃぐちゃに聞こえます。で、この邪魔な2発目をレベルで下げると今度は適切なディレイの長さ(Feedback)が得られません。

先日、友人のライブがありまして、U2ばりにディレイを駆使した曲(つまりディレイ音が大きい設定)があったのですが、ソロが見事にディレイでぐちゃぐちゃになっているのを聞きました。彼はたしかデジタルを使っていたのですが、それでも昨今のディレイでアナログ系の音質に設定していたように思います。ライブですので音量もでかく、ディレイ音がこもるから余計に原音に対してぐちゃぐちゃするのです。

 

ディレイ音に差がある理由

まあ、個人的推測ですが、ほとんどはそのチップのせいではないかと思っています。そうした癖があると言いますか。

中にはちゃんと昔のディレイのようにきれいなディレイ音を持つものもあるので、メーカーの設定なのかな?とも思っています。メーカー設定であればその調製部分の回路が組まれるはずで、そう安くできるものではないでしょう(回路に詳しくないのでわかりませんが)。安いものならその回路がない故にチップ性能任せにしているという推測です。

もしメーカーで設定できるならば、そうする理由としてレコーディングでの仕上げ音を模しているのか?と疑います。レコーディングではギターのステレオ化で原音に対してディレイ音を反対に振るって事をやりますし、意外と多いのがディレイの1発返しという設定は昔からよくあります。どうもこの演出(効果?)を狙っているような気もしますが、考えすぎでしょうか?

 

どんなディレイが綺麗なの?

自分の好みは最初に書いたとおり、デジタルで甘めの音を持つ、レベル差がなく綺麗な減衰をするディレイです。

そうすると前回の記事と同じく、少し前のデジタルディレイが良いわけです。簡単に言うと、12bitのデジタルディレイです。確かにデジタルですからアナログよりはぼけないですが適度に甘いトーンを持った、ディレイタイムもアナログより少し長いのでこれが万能なのではないでしょうか?

90年台に出ていたデジタルディレイが当てはまります。トレイルモード(スイッチオフにしてもディレイ音が残るやつ)付きというのがなかなかないのが残念です。

昨今のディレイでは、デジタルは16bitでバキバキするし、そのアナログシミュレーションもただこもらせただけと言うか、もやっと膜がかぶった感じで芯のあるクリアさがないです。テープモードでも変な揺れがするし、逆にそれを謳っていても揺れないものとか(テープディレイの場合、実際は不規則に揺れが起こるのに対して、揺れが正確に規則的に感じます)、その他ノイズレスすぎて不自然な感じが否めません。

また、アナログディレイでも、ロングであるほどどんどんこもっていく感じ(トーンが変わっていく)がわざとらしくて気持ち悪くし...ん~、という感じです。

 

おすすめディレイ

まずは、中古品。まあ見てくれはしょうがない(傷など)として、1昔前のデジタルです。

たとえば、Boss DD-2、Ibanez(Maxon)DDLシリーズとかDLシリーズ、DDシリーズ、YAMAHAのコンパクトなど、とにかく古いデジタルですね。この辺はどれもが12bitです。16bitになる仕様変更ではほとんどのメーカーが型変わりしています。ちなみにBoss DD-3はたしか最初は12bitで後に16bitに仕様変更しているはずです。何年頃なのかはわかりません。昔のはいいのですが、今のはやっぱりバキバキしています。あとはコーラス同様にBoss MicrorackシリーズのRDD-10(20もある)です。

中古は安いので手に入れやすいのですが、狙ったものがあるならそれは一期一会ですので、即試奏をおすすめします(コンディションチェック)。当然古いなりのリスクはあります。また、ディレイタイムも短いと思ってください。たとえば、Ibanez DL-10はデジタルですが、最大400msしかありません。今のデジタルディレイのように超ロングなディレイはありません。Boss DD-2は最大800msでした。

新しめのものですと、One Control Sea Turquoise Delay、Providence Chrono Delayあたりで、時点でBoss DM-2wかな?これのC(ustom)モードです。ちょっとエフェクト音がこもってますけどね。まあこれだけアナログなんで。ワンコンのディレイは扱いやすかったですね。返りの音質も割とアナログライクです。

安めの中華系はほとんどだめ(前出の返り音1発目がでかいと言う意味)でしたが、唯一と思ったのはMoore Reechoです。Mooreはディレイを4種類出してますが、その中ではまだ行けるほう。

 

何で今更12bitのデジタルを選ぶか

まずは、これを聞いてください。

Night Rangerの「Rumers in the Air」です。これのイントロは、ディレイの1発返しで、ディレイの返しを含めて16分の1拍半フレーズになっています。しかもボリューム奏法付きという、やってみると結構大変な奏法です。たしか、ブラッドギルスはRoland SDE-3000だったかSDE-1000(ラックもののデジタル12bit機)を使ってこれをやっています。

次はこれ。

松原正樹氏の「Make It With Me」です。これも頭からディレイの1発返しで、16分で返してます。弾くのは8分ですが、聞くと16分でダブルに鳴らしています。当時はRoland SDE-2000かKorg SDD-1000(どちらもラックもののデジタル12bit機)でこれをやっています。

こうしたシーケンスフレーズっぽいディレイの使い方は、アナログでははっきり聞こえないし、昨今のデジタルではクリアすぎて味にならないんです(要は弾いていて気持ち悪い)。

以前、1発あわせのセッションで、なんかの曲でリズムマシンを使った曲に、16分の単音シーケンス(2番目の松原正樹氏と同じディレイの使い方)をぶつけたことがあります。キーボード奏者が操作してイントロ後にリズムマシン(ハイハットの音)をストップさせるのですが、そこにかぶせていたので、キーボード奏者がテーマメロに移ってから「あれ?止めたのにまだ鳴っている」とステージで慌てている姿をビデオが納めておりました。わかる人はわかるようで、後でキーボーディスト含め数人に質問攻めにされました。

普通にダブルで16分を弾くのと、ディレイで16分にするのとではシーケンサーっぽさが全く違います。同期の曲やその雰囲気が欲しい場合などでも使える技です。

デジタルの方が使える範囲が広いというか、飛び道具的サウンドなども含めて可能性が大きいと思います。できれば今のデジタル(16bitもの)にアナログモードではなく、トーンがついていればそれでいいんですけどね。