モジュレーション系

「揺れる」コーラスVS 「揺れない」コーラス

2018年 11月 24日 19:11 | カテゴリー: モジュレーション系
2018年 11月 24日 19:11
モジュレーション系

つい先頃BOSSより「DC-2W」、技クラフト版のディメンジョンが発売されました。言わずと知れた「揺れないコーラス」の代表格です。

ここ数年、ペダルの方ではデジタルを主体としたコーラスで「揺れないコーラス」が流行とも言えます。でも、一番最初のコーラス、BOSS CE-1のようにアナログで「揺れるコーラス」も不動の人気であります。

まあ、はっきり言えば個人の好みで分かれるところではありますが、今一度コーラスというものを検証したいと思います。

 

コーラスの原理

簡単に言って、「原音に数ms~数十ms送らせた信号を混ぜて揺れを作る」ものです。この数msと言う時間は、0~10ms程度がフランジング(フランジャーがこのくらい)、10~30ms程度がコーラス、50ms(ディレイの領域)まで離れるとダブリングの領域と言われています。コーラスやフランジャーはディレイの派生機とか、ディレイの兄弟機というのはこのディレイタイムが違うだけなのでそう言われています。

昔はBBD(Bucket Bridge Device=バケツリレー素子=信号遅延素子)というチップでアナログ回路なために「揺れる」と言うことは避けられないもので、ギターで言えば全域にわたって揺れがかかるため、6弦側の低音と1弦側の高音では揺れ方が違い、それが混ざると複雑な揺れとなって「深く」かかるように感じます。また、その回路故に暖かみがある音でアナログコーラスが甘いとか深いとか言われる所以です。

そのBBDも生産完了となりデジタルへ移行すると、低音側と高音側の揺れ方の問題に着目してEQを搭載して高音寄りに揺れを作った方向性を持ったのが昨今のデジタルコーラスで、BOSSのCH-1やCE-5がそれです。この高音寄りのコーラスは、いわゆる「さわやか」とか「軽い」とかの形容で、「揺れないコーラス」となります。

ですが、その揺れないコーラスは掛かりが浅くなり、広がりとか深さが感じにくいものです。そこで考えられたのが多相コーラスです。この多相コーラスの最初期モデルはRoland SDD-320です。これは簡単に言うと2相のコーラスです。それをお互いに逆位相としてぶつけ揺れを打ち消しながら深さを残す、そしてステレオにすることで揺れの少ない広がり感を出しました。モノラルにしてもその深さは維持します。これが発展してDC-2Wとなります。

 

アナログコーラスの銘機2台

sdd320_naname.png

1台は先ほど出てきましたSDD-320。2相コーラスでコントロールが4つのボタンしかなく選択のみで、裏技でボタン2つ押しとかできました。19インチのラック仕様で基本はスタジオ機器です。ストリングスやシンセパッドにかけるとその空間演出(広がり感)をするという使い方が多かったものです。エレピとかでも使っていました。

本来はギター用ではなくスタジオ機器ですので、ギターで使用するにはどうでしょう?掛け取りと言うよりはミックス時にかける(つまり録音後の加工)として使われていたことが多いと思います。

TC1210_chorus.png

2相のラック式コーラスではTC Electronic TC1210 Spatial Expander + Stereo Chorus/Flangerと言うのもありました。これはギタリストでも使用している人(松原正樹氏とか)は多かったように思います。

現役時代は80年台後半ですのでこの後はギタリストもラックシステムへと変化していく頃でした。でも著名なギタリストでSDD-320をラックに入れていた人ってあまり記憶にないです。それよりもギタリストに多かったのはSongbird Tri-Chorusですね。これはLA系のスタジオミュージシャン(スティーブルカサーやマイケルランドウなどもそう)はもちろん、日本のスタジオミュージシャンでも多かったです。

songbird_tsc1380.png

このSongbird Tri-Chorusは名前通りの3相コーラスで、実はこれまた日本製。しかもSDD-320とは違って、ちゃんとDepthやSpeedがコントロールできるので、コーラスとしては使いやすかったです。しかも3相であることで深くも浅くもできます。

実際自分でも使っていましたが、深くて濃い、揺れるイメージがあります(調整次第で真逆のセッティング=さわやか系も可能)。確かにこれでしか出せないOnly Oneなサウンドです。当時の高級機と言われた機器にしか使用されていなかったウインクSWが良かったですね。

余談ですが、この3相コーラスを模した有名なプログラムは、たとえばYAMAHA SPXシリーズにあるSymphonic、コンパクトではTC Electronic Corona ChorusのTriモードなどがあります。ただこれらはデジタルなので掛かりがきれいすぎるというか、深さはありますが、アナログのようなファットな暖かみは感じられません。 また、FulltoneからはSongbird Tri-Chorusの復刻版なども出ているようです。

 

ではどちらが良いの?

はっきり言って個人の好みで、どちらが良い、悪いと言うものでもありません。どちらかと言えば自分は「揺れる」ほう(と言うより深い方)が好きです。やっぱりSongbird Tri-Chorusが忘れられないですね。

このSongbird Tri-ChorusはYouTubeなどでは結構さわやか系できらびやかなコーラスサウンドが聴かれますが、実際はもっと、こう、くどいと言うか、濃いと言った深みが良かったわけです。それでいて「揺れ」がその深みの中でうごめいている感じとでもいいましょうか、リバーブやディレイを併用するともう、幻想的な空間がうごめく感じで、音がその中で漂う感じが良かったのです。

もうその頃からラインでしたからステレオが必然でしたので、その気持ちよさに酔いしれていた自分を思い出します。で、このサウンドがコンパクトではなかなかないのです。だからアナログだ、デジタルだと言った区別では収まらないところになってきています。

 

実は最近(と言っても数年前くらい?)になって、コンパクトコーラスの別な潮流が現れ始めています。

長くなったので、また次の記事へ