マルチ系

マルチエフェクターの考察

2012年 12月 21日 12:56 | カテゴリー: マルチ系
2012年 12月 21日 12:56
マルチ系

アンプシミュレーターを中心としたマルチエフェクターも何気にブームも去ったというか、一時期のアンプシミュレーター加熱も冷めやり、テクノロジーや製品の飽和感を感じています。「もう過渡期か」と思うほど、メーカーも新開発のネタも出尽くした感があります。

僕自身も何台か使ってみて、各メーカーの押したい部分や方向性、テクノロジーなど理解してきたわけですが、ここで一度振り返っておこうと思います。

これからマルチを買われる初心者の方や、再燃&現役組でも参考になるとよいと思っています。

 

そもそもマルチエフェクターとは?

一言で言ってしまえば、複数台のエフェクターが一つの固体に内蔵され、同時に幾つものエフェクターが使用でき、総合的に音作りが可能なエフェクターのことです。最近では売れ行きのせいか、コンパクト系(特にブティックブランドなどの高級品)を買うような値段で、複数種のエフェクトが手にはいるので、マルチの人気度合いがわかろうというものです。

唐突ですが、以下に、マルチエフェクターの全体的な特長をまとめました。

  • 大体がパッチメモリー持っていて、複数の音色を記憶でき、切り替えができる。
  • 各社のモデリング技術が上がってきているので、往年の名機やヴィンテージ品、希少品のようなものが再現され、手に入りにくいものでも簡単に使用できる。
  • 良いものだと、プリアンプ的に使えたりする(もちろんエフェクターとしても使える)ように、適切な出力が選べる。
  • 大体のマルチエフェクターがオーディオインターフェース機能を有している(直接USBでパソコンに録音が可能)。
  • そのため、簡易なDAWアプリケーション(ライト版)などが付属していて、すぐに曲作りができる。

こんな感じですが、昨今(特にここ3~4年)では、アンプシミュレーターに焦点が当たり、一世を風靡し、今やどんなメーカーも積んできています。

アンプシミュレーターには、昔は単なる音色の模倣に過ぎなかったものが、モデリングという技術が使われ、特に物理モデリング(回路モデリングともいいます)では、アンプに使われる真空管やコンデンサーといった素子レベルでのモデリングで再現するので、まあ本物といえば本物、仮想のコンピュータ上でも一応100%に近く再現できているというものです。

ただ、正確には、コンピュータの処理能力にもよるし、コストダウンのために音は変わりないように性能値で見て回路省略ということもあります。メーカーごとの固有の機能が多少省略されているのがそれです。

そして各メーカーともに、往年の名機は勿論のこと、数的にも、質的にも上がってきており、コストとの折り合いで特色が出ています(特に動作のためのDSPとメモリーなどがコストの鍵です)。

さらに、このモデリングを使って、これまた往年の名機と言われたエフェクターも蘇ってきています。古さからいえば、Fuzzやワウペダルに始まり、歪み系、テープエコー、コンプ、コーラス、アナログディレイなどなど、再現されているエフェクターも千差万別で、これまた各メーカーの特色にもなっています。

 

セレクトされたアンプモデルやエフェクターについて

各メーカーがセレクトした再現モデルには、同じモデルがありますが、決して同じ音ではありません。これはサンプルするために手に入れた機器が、経年変化や使用状態などによるコンディションの違い(特に真空管など)があったり、コストによる再現回路の違い(考え方と、そこから導き出される機器専用の回路の違い=技術力の差)によるものです。

ですから、本当は「あのメーカーのモデリングは、本当にすばらしく似ている」とかって言う発言は、たまたま本物を使ったことのある人が、そのマルチを使ったときに自分の使い方に近かっただけの話で、決して他のメーカーが悪いといっているわけではなく、いくら比べても同じ土俵ではないので、個人的主観で気に入るかどうかだけの話なんです。

少なくとも、どのメーカーも実機をベースに研究、開発しているわけで、しかもそれを売り出そうとするときにミュージシャンにヒアリングしてもらったり、開発に携わってもらったりしているので、まったく嘘の音色が出るわけではないのです。本物の実機が持つ性能(ダイナミクスや質感、もちろんスピーカーからの出音も含めて)内に収めているわけです。だから本物を知っている人は、その調整幅が狭い場合に「似てない」とか「違う」とかいうわけです。ですからその調整幅が限りなく実機に近ければ、どんなモデリングもその機器が持つ性能が発揮され、使う側のイメージした「本物の音」となるわけです。

もう一つ、その実機(本物)をどれだけ体験したかにもよります。たとえば、マーシャルといえども、イメージ的にロック、メタル系には必須の歪み系アンプとして名が通っていますが、時にはノーマル音で演奏することもあれば、やろうと思えばジャズもできるわけです。ですから往年の名機といえども、触れたことがない場合(特に若い方など)には、それがいい音かどうかというのは自分の好みの問題になります。

ですから、自分の気に入った音ができないことが、その機器が悪いというわけではなく、自身の経験値が足りないということだけなんです。よく機械に文句言う人がいますが、プロはどんな機械でも自分の音が作れます。ただ知らないだけの場合が多いので、とにかくいろいろなセッティングを試してみることです。その癖が理解できれば、どんなマルチでも使えるようになります。特に初心者では、あまり歪まないタイプのアンプモデルをセレクトしておいて、ハイゲインを望むようなことが割りと見られます。また、歪みが足りないからと2段で組んで(ディストーションとアンプモデルなど)、ゲインを上げすぎているのに、ノイズが多いなどと言うこともあります。

ちなみにマルチの内蔵モデルだけでならどんなセッティングをしても、まず壊れることはないでしょう(とはいえ、極端なゲイン上げの連続などは避けましょう。いわゆる個々のモデルを普通の使い方をするならほぼ壊すことはありません。とはいえ絶対ではないので、少なくともマニュアル読んで普通の使いは覚えましょう、ということです)。なので、マニュアルをじっくり読んで、またはとりあえず実機がどんなモデルかググって見る、または自分の好きなアーティストの使用しているモデルと同じものや近いもので目指す音を作ってみるなりして、そのモデルの特性を掴んでください。

決してメーカーがセレクト、調整したモデルが悪いわけではなく、あくまでも本物と比べたときに調整幅が狭いだけ、逆に言うと、セレクトされた音色は本物の持つ音の一部だという認識が必要です。それでも好みの音が出ない場合に、他機種を選ぶか、本物を持ってくる以外には解決の方法はありません。

 

各メーカーの個性

マルチエフェクターには、各メーカーの個性があります。最近(2012年12月現在)の代表的な機種をまとめてみましょう。
 

LINE 6 Pod HDシリーズ(モデリング重視系)

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アンプシミュレーターで名を馳せたメーカーです。ですので、あくまでもアンプ(というよりモデリング)が中心で、エフェクトの並びを見てもスタジオ環境が再現されています。もちろん、通常のコンパクトエフェクターを並べるように並び順を変更することも可能です。Pod X3はアンプモデルも最多を誇ります。また最新モデルのPod HDシリーズは数よりも質を重視して、アンプモデルの再現性を高くしています。

スタジオ環境が再現されているということは、特に空間系エフェクトが後段にあります(デフォルト)。つまりのエフェターのように使おうとするとアンプモデルをディストーションのように使うことができます。ですから、Podを使うときは、空間系を使うか使わないかで、大きく変わります。要はDAWなどの録音時にディレイやリバーブをDAW側でかけたほうが曲にも馴染みやすいのです。
 

Roland(Boss) GTシリーズ、MEシリーズ(エフェクターベース系、割とプログラム切り替え重視系)

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エフェクターでは老舗のBOSSの親ブランドがRolandです。シンセでは世界トップレベルのメーカーですから、モデリングの技術も一級品です。どちらかというとエフェクターのほうが中心のマルチです。昨今のモデリング事情からはヴィンテージ系のモデリングも入ってきていますが、基本的にはエフェクター重視です。ですから、各エフェクターの並び順の変更は勿論のこと、ギミックが多いのも特長です。GTシリーズは個々の切り替えも可能です。

最新のGT-100ではAccelペダルやEZトーン(簡易音作り機能)が充実してきています。そうした初心者向けにも考慮した機能があるのは秀逸です。エフェクターの基本を学ぶにはRoland(Boss含む)が適しているかもしれません。

MEシリーズは、言ってみればGTシリーズの廉価版ですが、さすがはBOSSで、単に廉価版に終わるようなことはありません。EZトーンなどは継承されていますし、一部のモデルにはモデリングも搭載されています。
 

Zoom Gシリーズ、MSシリーズ(エフェクターベース、個々切り替え系)

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Zoom Gシリーズは現在2種類に大別できます。心臓部であるDSPの違いで、ZFX-IVとZFX-IIIを積んだものがあります。ZFX-IVはG3/G5シリーズ、MSシリーズ、それ以外がZFX-III(のはず)です。2つのDSPの違いは勿論その処理能力になります。

後発のZFX-IVが最大6エフェクト同時使用可能です。どちらかというとマルチというより、個々のエフェクターを6つ並べたという表現が適切でしょう。パッチによる切り替え(個々の6種類のセッティングをメモリーしたもの)もできますが、スイッチには個々のエフェクターが割り当てられており、操作は個々の切り替えがメインです。ですので、使い勝手とすれば一番スイッチの多いG5が使いやすいはずです。

MSシリーズはマルチストンプという新しいジャンルを打ち立てています。つまり普通のストンプボックス(一台に一機能のサイズのやつ)の中に、マルチを突っ込んでしまおうという、なんともお買い得なマルチです。似たようなもので、Line 6のMシリーズというのもあります(こちらはたくさんエフェクトがありますが、そのサイズによりエフェクトの同時使用数が変わります、しかも発売はこっちが先です)。

実は最近G3を手に入れたのですが、このレビューと音作りはまた後でやります。まだ忙しくて触っていません。
 

Vox ToneLabシリーズ、StompLabシリーズ(モデリング重視系)

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ToneLabシリーズは、本物の真空管を搭載したのが特長のマルチです(Zoomでもありますが)。特にアンプモデルは他社に引けをとらない秀逸な音質です。ただ、実際に使用すると他のエフェクトがちょっとしょぼい感がありますが、それにも増して歪み(アンプモデル)は良いです。ですから、「でっかいディストーション」と思えば、単品のブティックメーカーの歪みにも負けじ劣らずの音質を持っています。上位機種のEXはスイッチも増えて使い勝手が良いです。STは上下のプログラム用のスイッチだけなので、プログラムをうまく組んでやらないと音色の切り替えが面倒かもしれません。

最近出たちっこいStompLabシリーズは、真空管はありませんがその分コンパクトさが売りです。音質は真空管とは違いますが、まあ普通のマルチとしてプログラムを切り替えるタイプです。最大7~8種類のエフェクトが同時使用できますが、1プログラム内での個々の切り替えはできません。音作りのときにジャンル別で最適な音質を選べるという試みが面白いです。設定されたジャンルにとらわれずにとらわれないことが、自分の音を見つけるための要素かもしれません。とにかく安いので、飛び道具としても面白いかもしれません(音質は割りと正統派ですが)。
 

Korg AXシリーズ(エフェクトベース系でプログラム切り替え系)

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マルチとしてはいたってスタンダードなタイプで、モデリングも充実しています。昔は大きいのやら小さいのやらたくさんあったのですが、今はAX5Gしか出てないんですね。エフェクトの質もKorgには定評があるので安心して使えます。

しかし、KorgのマルチというとポケットタイプのPANDORAのイメージが強いです。また、輸入代理店であるVOXのほうがイメージ強く、どうしてもVoxに行っちゃいます。

 

まだ他にもたくさんありますが、こうしてざっと見ると、エフェクターベースのもの(この場合、個々のエフェクトを切り替えできる系と、プログラム中心切り替え系の2種)、モデリング重視のもの(特にアンプモデルやヴィンテージエフェクター系)、のおよそ3種類に大別されます。

各社ともに最上位モデルでは、ほとんど差がないくらいの機能充実ぶりですし、決める要素はやっぱり歪みの部分かもしれません。あとは使い勝手や音の作りやすさ、ペダルの有無、オーディオインターフェース機能の有無くらいでしょうか?

取り扱い的には、マルチといっても今やアンプシミュレーターと見る風潮があります。ですので前述のように、音質に関しては試奏するしかないですし、好きなアンプモデルやヴィンテージエフェクターが入っているとかが、ポイントになります。もちろん予算もありますね。

予算の都合で廉価タイプを選ぶときには、上位機とは結構機能差があり、メーカー間でも結構差があるので、決めるのにも一苦労があるかもしれませんが、上記のポイントで絞れば決まってくると思います。マルチエフェクターは初心者にもエフェクターを覚えるにも良し、とりあえず練習用(ライブでも使えますけど)に一台は持っていてもいいものだと思います。