歪み系

TS系Over Driveの大きな誤解

2012年 03月 22日 05:15 | カテゴリー: 歪み系
2012年 03月 22日 05:15
歪み系

ギタリストの歪み探求というのは、限りなく無限に近いもので、好みを見つけるにはそれなりに経験を積んで、音がわかり、ギターの腕も、スタイルも上達して、変化もするものです。だからこそ無限になるわけですが、ある意味、アンプ、エフェクターと言った良い意味での制約から逃れることはできません。言い方変えれば、アンプやエフェクターなどの既存のものを使って音を出すしかないわけで、その味付けで好みが生まれてきます。

なかでも、ここで言うOver Driveは歪みの中でもFuzzやDistortionと比べて新しいもので、「真空管の歪みをシミュレートした」と言うのが売り文句であります。各社こぞって様々なOver Driveを発売しています。それぞれに良いところがあり、また、今ひとつというのも多いですが、昨今のTS系クローン、モディファイといった亜種の多さには閉口するくらい数多く出回っています。

かくいう私も現在のメイン歪みはVisual Sound Jekyll & HydeというOver DriveとDistortionを2個1(ニコイチ)にしたものを使用しており、Over Drive側はメーカー曰くTS系モディファイです。

 

Tube Screamerの誤解

前の記事で歴史を書きましたが、私も現役でBoss OD-1から始まって一連のBossのOver Driveは使いましたし、Maxon(つまりOD808から始まるTS系の流れ)系のOver Driveも試してきました。

当時はまだギター小僧でもあったため、ややBoss寄りではあったのですが、Maxonは好みではなく、若干歪みがおとなしめだったこと、また、今で言うウォームだとか中域の暖かいなどという印象とはかけ離れて、チリチリした歪みで音が軽く、今1どころか今3くらいのイメージで、それでもOver Drive代わりに使っていたのがD&S IIでした。これはDistortionながら、さほどの歪みはないけどOver Driveよりは歪み、トーンも比較的柔らかい方でした。なので、さらに軽い音のしたOD808、TS808は試したけど使うに及ばず...という感じでした。Pod X3でもTube Screamerのモデリングがありますが、やっぱり似てない。

さて、ここで振り返ってみると、どうしてオリジナルTS系の音がここまで神格化され、体験した時の音がかけ離れたイメージでしかないのか?と言う疑問が、以前からつきまとっていたわけです。

考えてみると、やはり偉大なプレイヤーとそれに答えようとするエンジニアの努力が、音を洗練させているように思います。

例を挙げてみると、たとえば故Stevie Rayboarn。かのブルース系で有名なギタリストで、彼が使用していたのもTS808系で、時には2段掛けもしています。使用アンプは様々で、有名どころではFender Deluxe ReverbやDumble Ampと言ったところ。出てくる音は確かに「ウォームで張りがあり、伸びる」という、現代のTS系クローンによくある形容がつきまとう訳です。

この年代に活躍するプレイヤーは若い頃にはやはりアンプメインで、Stompは使っていたとしても世に出てから(つまりレコード化されてから)の、あの艶っぽい音な訳です。種を明かせばアンプ直前にStompを置いてブースター的使用なんて昔からある技ですが、これを実現していたのは言うまでもなく、彼も一緒です。

Fenderアンプはウォームであることは周知の事実ですが、チリチリした軽い歪みのTSは、言い換えれば、クリアで抜けがよい、つまり「張りがあり伸びる」ところがあり、でも、単体で見ると決してウォームとは言い難いわけで、アンプと相まって「ウォームで張りがあり、伸びる」音ができあがります。

そしてStompのビルダー達はこぞって、こうしたいい音を出しているプレイヤーの音を耳にして、その音を目指して、モディファイやビルドを始めます。しかし、本人が作った音を直接耳にしていた人はどのくらいいたのでしょう?ほんの一握りの人であることは想像に難くなく、ほとんどの人は「あのアルバムに入っているあの曲の音」を目指したとするほうが多いはずです。また、そうしたリクエストも他のプレーヤーからこぞってあったと思います。

つまり、TS本体はいつでも入手ができ廉価ですので、回路をばらして中身はいじり邦題です。いろいろなプレーヤーの要望に対応すべく、モディファイの道へ進んだはずです。そこで、先ほどの「ウォームで張りがあり、伸びる」が欲しい、つまりアンプ込みのサウンドである音質を求めてモディファイが始まったと言っていいと思います。こうして、アンプ込みのサウンドが、いつの間にやらStomp Box単体で再現できるものを求めた結果、オリジナルTSを超える、超えようとしたモディファイが生まれたわけです。

そのベースモデルとなったオリジナルTSの回路が様々なモディファイを生み出したのは言うまでもありませんが、これだけモディファイやクローンが存在するというのは、いかにオリジナルが物足りないかを物語っており、神格化されすぎのような気もします。

 

オリジナルTSの弱点

弱点をカバーするために様々な改造が上げられますが、昨今出てきているTS系のMod品は、以下の特長があります。

  • 中域がウォームである
  • 低域を補っている
  • 音が伸びる(捉えようによっては、もう少し歪み感の増強=ゲイン増強とも言える)

というのが、決まり文句のように謳われています。

つまり、これこそがオリジナルTS系には足りなかった部分で、最初に感じた私の印象はこの3点を省いたチリチリした軽いOver Driveだったということになります。

それから時代も進み、歪み自体もさらに細かく分類される中、ベース回路で判断するしかなく、技術屋さん(ビルダー)にとっては回路図見ればわかることです。そして現在TS系モディファイ、クローンというのがいかに多く発表されているか、というところは、Over Driveの最初の定義である「真空管らしい歪み」を追求して、時代が求めた結果でしょう。

 

一口にTS系と言っても...

現在は確かに様々なバリエーションがあり、「これ本当にTS系か?」とさえ思う、良い出来のものがあります。ですから、オリジナルのTSがいいのか?と聞かれると何とも言い難いですが、現代版のTSモディファイ、クローンは確かに良くなっていると行って良いでしょう。当時使用されていたパーツなどで手に入りにくいもので回路変更が生じたりしますが、大体どのブティック系(ビルダー)でも、ノイズは減り、前述の条件を持っているので、間違いなくオリジナルよりは良いでしょう(まあ、好みの問題もあるので一概には言えませんが...)。

 

TS系Over Driveのおすすめポイント

私の場合に限ると、オリジナルベースのクローン、コントロールも音質も歪み方も同じように作られたものは、やはり物足りなさがあります。どちらかというとTSベースのモディファイもの、最低限、前述の3つの条件を持つものでないとOver Driveとしてはもの足りません。

中でも、Over DriveはDistortionよりは歪みが少ないので、割とゲインが高いものを選びます。その方がサウンドバリエーションが広いのとサステインが良いからです。使用時は、ゲインコントロールを抑え目にして、ノイズを抑えます。軽い歪みのゲインコントロールをフル10にするよりヒスノイズが抑えられますし、いざというときに上げることもできるからです。まあ、同じエフェクターを2段掛けという荒技はこの発展系とも取れるやり方でしょう。

次に重要なのは足りない低域を補えるかどうかです。低域が出ないと艶はあるのですがギター全体の音が痩せて聞こえます。ただでさえ歪ませて音が細くなるわけですから、アンプで最終調整ではあっても、程度問題ではありますが、オリジナルTSよりはしっかりとした低音が欲しいですね。

そして音質はウォームで有りながら、しっかりとトーンが効くのが望ましいです。Sans AmpのようなアクティブEQとは言わないまでも、普通のハイカットではこもるだけ(これをウォームと勘違いしている人もいます)ですので、Filterタイプではない、EQタイプのトーンが付いているのが理想です。安いクローン(モディファイではなく)は、ほとんどがこの時点でだめです。ブティック系は歪みの質とこの辺で差が出ます。中にはブティック系でもFilterのトーンはありますから。

今のところ、全ての条件+アルファまで条件が整ったのが現在使用中のJekyll & Hydeということになります。楽器屋さんの話によるとJekyll & HydeはOver Drive、Distortionの両方共に結構ゲインが高いものだそうで、確かに他の定番と言われるものよりはゲインが高いです。逆に言うとだから他のが物足りないのかも?

まとめますと、

  • Over Driveとは言いながらも、Gainが高めに設定されている
  • 低域の補正ができる
  • トーンがしっかり効くモノ

ですね、音質に限って言えば。個人的にはトゥーバイパスでないこととか、操作面でもう少し希望はありますけど。

ですがこの3点に当てはまるOver Driveは、個人的主観を抜きにしても比較対象の条件になり得ると思いますし、良いモノも多いです。唯一、Gainだけは抑え気味のもあるのでそこは好みで。

あとは歪み自体のチリチリ感やコンプレッション感、ダイナミクス感などが、かなり分かれますのでご自身で試してみてください。