
Logic Pro X(10.3.2)の良く使いそうな隠れ機能
DAW
macOS High Sierra(10.13)へのアップデートを諦めて、Sierra(10.12)で行くことを決めてからSub OSの方で音楽システムを構築してみました。まだSnow Leopard(10.6.8)は残してあるので、ビンテージシンセ音源はこっちにあります。すべてが32bitのため、Sierraでは全滅です。その分、フリーの音源やエフェクトプラグインで武装してみました。もちろん手持ちの64bit対応プラグインは入れてあります。
で、今更ではありますが、やっとのことLogic Pro Xを入れてみたので、いじり始めたところです。
ぶっちゃけた第一印象は、「なんだ、これ?」です。
というのも、実は知らなかっただけなんですが、はじめてLogicをインストールするときは、以前のLogicの設定を引き継いでくれないもので、画面の至る所で必要な操作子が隠れているわけです。これは推測ですが、Mac Book(小さい画面)対応の表示をしています。だから絶対必要条件にあたる操作子しか表示されていないのです。立ち上げて一瞬「以前のコントロールはどこへ行ったの?」と目を疑いました。フラットデザインでよりシンプルなのは良いけど、ここまでシンプルなのはないんじゃない?と。
Logic Pro 9の入っているOSの上にインストールする、いわゆるアップデートなら設定が自動でフルに出てくるようなので、それならこんな印象はなかったのだろうけど、プロっぽさが無くってがっかりしてました。そんなことが1500ページ以上あるマニュアルの中にたった1行しか書かれてないので、どこをいじったら良いのかわかりませんでした。
で、使いやすい設定のために、これまた随分と時間がかかって、さらに新規のプラグインばかりで未だに全部把握できてません。
まあ、それでも?、9からのバージョンアップで使い勝手が良くなって、知ると良く使うことになるであろう隠れ新機能をご紹介します。
Logic Pro X 10.3.2の新機能
まずはすべての機能を見えるようにしましょう。
Logicを立ち上げて、メニューバーから「Logic Pro X」→「環境設定」→「詳細ツール...」を選択して、環境設定ウィンドウを開きます。ここにある「詳細編集」の項目にチェックを入れ(一番下にある「すべて有効」を押してもOK)、ウィンドウを閉じます。
これで、全機能にアクセス可能な設定になります。
まずはPan
仕様変更となったチャンネルストリップの中でもかなり使用頻度が高いと思われるのが、このPanです。今まではユニバーサルトラックモードというもので、ステレオトラックを強引に分割することでしかパンコントロールが出来なかったものが廃止され、新たにできたのが「ステレオパン」です。
元来はバランスにしかならないステレオトラックが「ステレオパン」にすることで、例えばAuxにバス送りしたトラックでも、自由にパンの幅と位置(方向)を決める事ができるようになりました。
これにより、リバーブなどを刺している場合、従来のバランスなら左右どちらかに振り切ってもセンターからは音がするのでごちゃごちゃに聞こえますが、ステレオパンなら元音と反対に戻したり、同じ位置に戻したり、もちろんその幅もコントロールが可能です。
これはステレオトラックのパンノブをマウスで右クリックで「バランス」か「ステレオパン」、「バイノーラルパン」かを選択できます(バイノーラルパンは普段は使いません)。
プリメーターとポストメーター
触り始めて「あれ?」と思ったのが、このレベルメーター。フェーダー下げてもメーター上がったままじゃん。実はデフォルトがプリメーターなんですね。いやアップデートでならどうなるかは分かりません。でも始めて使う人なら面食らうかも、ですね。これはPro Toolsには随分前からあるのです。つまりプロが使うには割と必須なメーターなんです。
Logic Pro 9まではポストメーターなので、フェーダーの位置に合わせたトラックの出力が表示されるのです。ところが、プロのレコーディングスタジオなどでは様々なレコーディング卓でデジタルシステム(Pro Toolsのような)に突っ込むので、入力の時点でレベルが歪むとマズイわけで、それを監視できるのが入力時のメーター、つまりプリメーターなのです。
そして昨今のCPUベースでのレコーディングはなんでも出来てしまう(語弊はありますが)ので、プラグインなどでレベルが歪まないように調整が可能になります。サチュレーション系などでのプラグインとしての効果の歪みなのか、オーバーレベルによる歪みなのかを判断できます。プラグインによっては刺すだけでオーバーレベルになるものは意外とありますので、正しいレベルでの正しいプラグインの効果による判断が可能です。
プリメーターの場合、プロはミックス具合を「耳で判断」となるわけですが、そこはLogicなのでちゃんと今まで通りのポストメーターに切り替える事ができます。
切り替えは、先の環境設定が出来ているのを前提として、上部のコントロールバー(前のトランスポートという呼び名から変更されています)の空いているところでマウスの右クリックか、Controlキーを押しながらマウスクリックで表示されるメニューから「コントロールバーとディスプレイをカスタマイズ...」を選択します。表示されたメニューから一番右の「モードと機能」の中から「プリ・フェーダー・メーターを表示」にチェックします。「OK」しますとコントロールバーに緑のボタンが現れます。
これが切り替えボタンで、押した緑の状態でプリメーター、もう一度押してグレーの状態でポストメーターとなります。ちなみにプリメーター時はメーターとレベル表示が左、フェーダーとピークメーター表示が右、ポストメーター時はメーターとレベル表示が右、フェーダーとピークレベル表示が左になります。
コントロールバーにはこうした隠れ機能が満載ですので、先程のメニューのすべてを見て必要なものは「デフォルトで保存」にしても良いでしょう。
どうでもよいチャンネルストリップ2つ
ミキサー画面を出した状態で、シングル、トラック、すべて、という表示切り替えタブがあります。ここの「すべて」を押しますとひょっこり現れる「Prelisten」チャンネルストリップがあらわれます。
1つめはこれ。全然意識せずにたぶん皆さん使ってます。例えばメディアブラウザからオーディオファイルを読むときやApple Loopを使うときなど、まずは聞きますよね?その時に音声信号が流れるチャンネルストリップです。これエンバイロメントウィンドウにあるものでLogic 9でもあったのですが、いままではチャンネルストリップとしては表示されていません。今のチャンネルストリップのように高機能ではないので、今わざわざ高機能にして表示させている意味があるんだろうか?と思います。まあ、プロジェクト立ち上げれば自動で作られ、トラック全て出さないと見えないので、試聴の段階でプラグイン刺すこともないだろうし、普通のトラックで試せばいいことなので、今さら表示させるのも意味不明です。
もう一つはVCAトラックです。これはこれであって然るべきなんだけど、マニュアルにはAUXトラックよりも負荷が少ないとのこと。でもね、普通グルーピングするならAUXにしてエフェクトプラグインで何かの処理をまとめてやる(ドラムが良い例)ので、何もできないただまとめるだけのトラックが本当に必要か?と頭を捻ります。AUXがあるし、そこでできることなので今さらあってもなぁ...という感じです。
代替トラック
まあこれも便利機能で、一つのトラックの中に別トラックを持てる機能です。昔RolandのVSシリーズというHDDレコーダーがありまして、それにVトラックという仮想トラックがあったのですが、まるでそれ。これは本来8トラックのレコーダーですが、各トラックの上に仮想で7トラック分あり、8×8トラックで使えたのです。つまりメイントラック+仮想7トラックで仮想トラックに別バージョンを記録して、メイントラックと入れ替えが出来ました。これと同じです。
たしかに便利なんだけど、Logic 9までは別トラックにしてミュートで切り替えれば、同じ事ができます。つまりはMac Book向けにスペースの有効活用としか考えられません。
まあ、別トラックをどんどんつくると下に領域が伸びるので、それを避けるため同一トラック上で切り替えて使うようにした、と受け取りました。
別トラックであれば同時表示で一部差し替えが簡単にできるのに、代替トラックだと同時に並ばないので一部差し替えは結構面倒な作業になるので、だめかも...。
グローバルトラック内のアレンジメントトラック
これはなかなか便利です。こういうのは欲しかったんです。マーカーを打ってイントロとかサビとか決めておき、このマーカーを前後に入れ替えると曲の構成が変えられるというものです。もちろんトラックのデータがマーカーのタイミングで切られて、ごっそり入れ替えることができるので、サビ始まりにしたりとか、簡単にできます。
オーディオリージョンのエフェクト追加レンダリング
いままではこれをやるにはトラックを一回バウンスするか、フリーズトラックにするか、Busを使ってかけ録りするしかありませんでしたが、リージョン単位で試聴、2つのセッティングを聴き比べしてかけられるようになりました。
自分ではあまり使いそうにもないのですが、今で言う「リアンプ」の結果をバウンスせずにリージョン単位でできるのはすごいかも知れない。
つまりエフェクトを反映すればその分プラグインは外せるのでCPU負荷は抑えられるという、これもMac Book向け機能だろうと思います。フリーズトラックというのもあるのだけれど...。
この機能は、必要とするオーディオリージョンをダブルクリックして、下側にオーディオエディター画面を表示させて、そのメニューにある「機能」から「選択範囲の処理(Logic Pro Xの10.3.2未満で呼び方が違うようです)」を選択して表示されるウィンドウで設定、試聴、処理を行います。
Track Stack
2つあるスタックのうち、フォルダスタックはLogic 9にもあったものです。まあ見せ方は今の方が見やすいのですが。で、もう一つの「サミングスタック(これもLogic Pro X 10.3未満で呼び方が違います)」は同じようなものですが、括ったトラックのフォルダーの上からエフェクトがかけられるところが違います。
例えば、違うインスト同士に同じリバーブをかけて同一空間を維持するなんてことができます。
でも考えてみてください。これと同じことはAUXでできるので、AUXでまとめた方がわかりやすい気がします。
プラグインを呼び出す時のリスト
結構な数をプラグインに入れたとき、画面を上下に突き抜けてリストが並びます。これが第1階層のみですがフォルダで区分けできるようになりました。もちろんLogicデフォルトは消すことはないのでその階層は伸びるのですが、たとえばWavesのように数が半端ない状況では、自分の好きなフォルダで区分けできるのはありがたいです。
これは、プラグインマネージャ内で操作します。左側のカテゴリと書いてある区分けする「+」マークを押してフォルダを作成します。そして製造元をクリックしてプラグインを表示させ、新しく作ったフォルダにドラッグ&ドロップします。
これはありがたい機能です。でも2~3階層作れるようにしてくれるともっとありがたいんだけど。
総評
その他にもLogic 9からみれば、たいそうな新機能がたくさんあります。
ですが、例えアップデートインストールしても設定箇所がやたらに多く、しかもMac Book用の小さい画面に便利にアップデートされたので、なんか音楽的ではない、プロっぽくない印象を受けています。
つまり効率が良いはずであるのに、そうした設定作業の方に手間を取られて音楽ができないことでダイレクト感がないというか、編集作業に時間がかかって曲を組み立てあげることが疎かになるとか、なんでもできる分、余計な手間がかかることが曲に没頭できない理由になりそうな軽い違和感が存在するのです。もっとはっきり言えば、今までもできるところに手を入れて、余計な手間を増やした感覚なんです。
トラックヘッダーのボリュームフェーダーとパンにしても、あんな小さいところで、しかも横表示でミックスはできるわけないので、そんな粗調整はいらんのでちゃんとミキサーでやらせてほしいのです。いうならば、切り替えで100mmフェーダー(プロのエンジニア必須です!)をつけてほしいくらいです。こうしたプロさが欠けているんです。
そして前からそうなんですが、既存の音源に関しても音質は上がっていなくて、3rd party製の方がやっぱりいい。ESXのサンプルやApple Loopなども24bit化されているようでも、44.1kHzのままなので、16bitを24bitにコンバートしただけみたいだし、エフェクトにしても、例えばコンプが焼き直しされていてもVCAとFET、Tubeなどの効果の差がはっきりしていない、どれも似たり寄ったりでピンとこないのです。これもWavesや他の3rd party製の方が音質や効果は良いのです。
まあ逆にいうと、味付けはほぼないので、有名どころのチャンネルストリップをかますとグッと活きてきます。おススメはやはりビンテージ系のチャンネルストリップで、SSL4000系、Neve系、Abbey Roadコンソール系(Redd、TM12345など)です。また、コンプやEQもビンテージものならプラグインとはいえ、ちゃんとその味が出せます。個人的にもビンテージ系は大好きではありますが、プロの現場で使われてきたハードのシミュレーションプラグインはやはりさすがの安定感、安心感で応えてくれます。
海外ネタで信憑性は疑わしいのですが、元E-Magicの社員(Logicが買収されたときの開発陣)がほとんどやめたらしいという話もあり、Logicはもうだめなのか?と勘ぐってしまいます。もう少し音楽性を高めてワクワクするようなアプリとして作って欲しい。Final Cut Xも出たとき、不評だったのを思い出しました。似た状況なのでAppleのアプリ開発は終わる方向なのか?とか、考えちゃいますね。
もうちょっと頑張ってほしいLogic Pro Xです。