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マニュアルにも書かれていないパンとSendトラックの使いこなし方3/3

2013年 04月 06日 10:08 | カテゴリー: Mix
2013年 04月 06日 10:08
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ポストフェーダー(ポストパン含む)と、プリフェーダーの違いはご理解できましたでしょうか?Logicだけの話ではなく、他のDAWでもこれは基本です。

ちょっと横道に逸れますが、プリフェーダーを使うと、実は外部エフェクトを加える場合などに絶大な効果が得られます。これはプリフェーダーの出力精度(鮮度)が高いからと言うのが理由でした。当然ボーカルやスネア、ギターなど、通すだけで音質が変わるような(良い意味で)ものや、ハードコンプで思いっきりぶっつぶすような音を作る時などのアウトボードを使うときにとても有効です。余談として覚えておいてください。

また、空間系をしっかり埋めてやることで、ベーシックな音圧が作られます。音圧が上がらないとお嘆きのあなたも、こうした全体の空間の作り方さえしっかりできるようになれば、マキシマイザーに頼らずとも音圧を上げることはコンプでも十分なのです。もちろんマキシマイザーなんて便利グッズがあるのなら、いとも簡単に上がるでしょう。ですから、元音の抜けなどの音質はもちろんですが、フェーダーを下げるくらいの音質、音量を各パートでしっかり出せる(もちろん必要なところで、ですが=例としてはEQですね。上げるばかりではないというのはこのことです)こと、これが音圧稼ぎの一番ベーシックな要素です。

では、続きいってみましょう。

 

ステレオトラックのエフェクト送り

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今度はステレオファイルの、ステレオトラックによる、ステレオ送りです(図9-1)。

各音量やパンについては、ほとんど前述のモノトラックのステレオ送りと同様です。ですが、重要なポストフェーダー(ポストパン含む)とプリフェーダーについてやっておきましょう。現在はユニバーサルトラックモードはオフです。

09-2.jpg

音源はステレオのオルガンです。ファイルが既にステレオですので、インサートされているエフェクト(Comp、EQ、Roter)はすべて、ステレオIn/ステレオOutです。

より効果を際立たせるためにロータリーエフェクト(回転スピーカー=レスリースピーカー効果)を入れてますので、左右に揺れて聞こえます。

先ずは原音を聞いてみます。送りのセッティングはできていますが、ここではSendボタンをオフにしてリバーブへの送りを止めています(図9-2)。

 

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では、バスへ送ります。

Sendボタンをオンにしてトラックからの送りを0.0dB、Auxバスの出力も0.0dBです。送り方法はポストフェーダーです。

オルガンの性質上、軽いコンプしか掛けてないので、出るところは出ます。しかも完全なステレオですから、エフェクト音もモノトラックの時に比べて掛かりが強烈になっています。

L/Rの2本が同時再生ですから当たり前と言えば当たり前です(図9-3)。

 

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次はプリフェーダーに切り換えます(図9-4)。

これもモノトラックの時と同様にダイレクトに送られるので、さらにリバーブ感が強まっています。

でも、これが一番鮮度がよいというのは先にお話ししていたとおりです。

 

さて、ここで面白いことをご説明します。まず原音が完全なステレオですので、原音トラックのパンはバランスとして働きます。パンを左(または右)へ振り切ってみると、原音トラックのレベルメーターは振った方向のメーターしか反応していません。

09-5.jpg

ところがAUXバストラックを見ると、L/R両方のメーターが反応しています(図9-5)。本来ならばAuxバスに入力される信号(=原音トラックから出力される信号)が片方だけならば、メーターも片方だけになるはずです。これはなぜでしょうか?

ダイアグラムがあるとはっきりするのですが、これはリバーブの内部結線上、左右の信号がクロスモジュレーションされている証拠です。クロスモジュレーションとは、その内部結線のどこかで左右の信号を混ぜている部分があると言うことです。ですからステレオと言っても完全なステレオではありません(特にこのLogic内蔵のPlatinumVerbに至っては、です)。まあ、ほとんどのリバーブが同じようにクロスモジュレーションしているはずです。これが完全に独立したステレオであれば、モノラルリバーブが2台あるのと同じと言うことで、広がりが得られません。モノIn/ステレオOutのリバーブは間違いなくクロスモジュレーションになっています。言い換えれば、これが疑似ステレオ感を醸し出しているわけです。


これがディレイなら、クロスモジュレーションディレイというのがあるのではっきりと効果がわかります。クロスモジュレーションを備えたディレイに入れ替えるとこうなります。原音の音像がどこにあっても、ステレオでディレイが返るのでL/Rのあちこちからディレイが返るように聞こえます。浮遊感を出したいときなどこうしたディレイはよく使います。

 

ミックス

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では記事の最後に今までご紹介したテクニックを入れてミックスしてみます。

音源は4つです。

GarageBandの素材から持ってきました(図10-1)。

 

1. ドラム

ステレオファイルでステレオトラックです。パンはセンターです。コンプで結構つぶしています。
 

2. ベース

モノラルファイルでモノラルトラックです。これ、最初からFinalizeされているみたいで、安定しすぎの音なので、サチュレーションで軽い歪みを入れ、軽くEQ処理しています。
 

3. ギター

既に素材で使ってきたものです。モノファイルのモノトラック。パンを左に振っています。Aux1バスは、リバーブからステレオのクロスディレイに変更し、ディレイ音を右に振っています。
 

4. オルガン

ステレオファイルのステレオトラックです。元から広がりがあるのでステレオを維持するためにパンはセンターです。
 

5. Aux3-4トラック

ここにリバーブを挿しました。入力はドラム、ギターのエフェクト(Aux1バストラックからのみ)、オルガンを入れています。こうすることで、一体感のある空間を演出できます。複数の音源が入っているのでフェーダーでは全体のエフェクトボリュームをコントロールするので、各インストごとの設定(Sendの送り量)は各トラックのSendボリュームで調整します。

全体の設定は、ユニバーサルトラックモードはオフ、Send送りはすべてプリフェーダーです(この設定はLogicだけでなく他のDAWでもデフォルト的に設定が可能です)。


ギターをディレイに変えたことで、左右の厚みが増しました。さらに全体を包むオルガンがドラムとの一体感を出しています。同じリバーブを共有しているからですね。さらにギターもこの同じ空間でに入れてやる(Aux3-4で挿したリバーブにSend送りする)ことで、曲全体の一体感が出ています。

ただ、今はわかりやすくするために深いリバーブを使っていますが、実際のミックスの行程ではこれほど深いリバーブを使う事はないでしょう。たとえばギターであればディレイの後にはアンビエンス系のリバーブ(初期反射がはっきりしたやつ)などで、もう少し金属感というか跳ねっ返りをなくして2本のように聞かせたりしますし、オルガンにしてももう少しロータリーの効果を強めてうねるように仕上げ、リバーブは小型のルームくらいで目の前で回るような存在感を出したりするモノです。

ストリングスやパッドなら深いリバーブも有りですね。コーラスやディメンジョン(ステレオイメージャーなど)を加えると、浮遊感たっぷりな演出が可能です。この時の原音の音質にも注意してください。生系のストリングスよりはシンセストリングスやパッドの方が溶け込み方や浮遊感と言うには適しています。

やっぱり音が立つソロ系は難しいです。室内の弦楽四重奏なのか、ホールでのオーケストレーションなのか、当然演出の空間もさることながら、その音の立ち方がリバーブとは混じりにくいので、その音のサンプルも(たとえばチェロとしたときに、サンプラー系なのか、モデリング系なのか、サンプルでも録り方やメーカーでも音が全然違うし)その音質違いで、曲の印象は格段に変わります。

一般的には各インストをモノリバーブ(または薄いディレイなど)で味付け(広がるかどうかの軽い感じに)して、全体で奥行きの調整(各トラックからSend送りでバストラックにまとめる+音量とパンが重要で、EQやコンプなどのベーシックなエフェクトはほぼ必須)をするのが、常套手段です。

また、このミックスにボーカルやソロなどを入れる場合には、このオケ全体をぐっと落としてセンター定位になるボーカルなりソロの音量を上げます。ですが、このメイン音源を聞かせるバックを作るときに今回の「奥行き感」とか「包み込む感じ」とかを駆使することで、オケ全体をさほど落とすこともなく隙間を埋めて音圧を稼ぐことができるようになります。マスタリングもスムーズにできるようになります。まあ、ここで紹介した以外のリバーブのバリエーションが必要にはなりますけど。

 

こうしたエフェクト処理とかやり方は伝授できますが、さすがにセンスまではできませんので、いろいろな音楽を聴きましょう。そして、ただのリスナー(聞くだけの人)からプレイヤー(演る人=コピーできる人)、さらにエンジニア(作れる人)の耳にまで鍛え上げて曲を聴くことができれば、もう最高ですね。それこそいろいろ聞きまくって引き出しを増やせば、アイデアややり方は自ずと見えてきます。ミックスに正解はないので、いろいろと試して、自分のミックスの味を身につけていきましょう。