Plug-in Effects

ダイナミクス系プラグインの種類

2013年 03月 12日 02:17 | カテゴリー: Plug-in Effects
2013年 03月 12日 02:17
Plug-in Effects

まだ書きかけの記事から脱線中です。いろいろと話の裏を取るのにググってばかりなのですが、どうしても先に知っていることが前提で内容を書いてしまいます。ですが、ブログって検索で直接記事に飛んでくる場合が多く、話を通すために「あれも書かなきゃ」、「これも抜けている」と気がついて書き加えようとすると、また長くなってしまうわけです。

Zoom G3の音作り実践編―実際の音」でやった音源を、ミックスしてみようというネタ作りをやってます。で、EQやコンプなどいろいろと使うのですが、最近はMacといえどもなかなか優秀なFreeのプラグインが出てきてまして、もちろん僕もよく使います。Windowsだと、これまたFreeで「あれも使いたい、これも使いたい」というプラグインがごっそりあるのですが、Macではなかなかないんですよね。もちろん売り物だったらたぶんにMacの方が良いプラグインが山ほどあり、お金がいくらあっても足りないという状況は目に見えてます。

ことをダイナミクス系に絞ります。ミックスをしているとどうしても外せないのがEQとコンプです。絶対とは言いませんが、ミックスではほぼ全部のトラックで僕は使います。特にダイナミクス系は、メインで使っているLogic Proでさえ、用途別に11種類、普通のコンプ1つとっても動作原理別で5種類あり、Pedal Boardなどギター専用的なものまで含めると数多いのです。なので、どんなときに何を使えばいいのか、わからなくなる時ってありませんか?

以前、コンプの動作原理の説明は、「生音の録音にはハードコンプを使う」と、「Logic Pro 8(9含む) コンプの謎」で、書いています。後者はLogicに特化していますが、前者の細かい補足になっていますので、合わせて読んでみてください。

今回は、コンプの動作原理の説明ではなく、数が多くなった呼び方とでも言いましょうか、タイプ別に分類してご説明します。

 

タイプ別ダイナミクス系プラグイン

ダイナミクス系というと、基本は音量を制御します。飛び出ている音を押さえ込むとか、音が飛びでないように抑え込むとか、その逆も有りで、小さな音を持ち上げることもできます。これを同時に行いますので、抑揚の付いた演奏情報(極端に言うとピアニッシモからフォルテシモ、MIDIのベロシティなら50~60くらいから最大の127といった、音の強弱のことです)の幅が縮まって、一定のレベルに近づきます。この幅のことを英語でダイナミクスと呼び、広いほど強弱が付き、狭いほど強弱がなくなります。

これをコントロールするには感とセンスに寄るところは大きいのですが、エフェクターの癖を知ることでより曲に馴染む、そしてそれを聞く人が良く聞こえるようにミックスするにも、基本的なことはおさえておきましょう。
 

まずはコンプレッサー

kingtao_analog_comp.jpg

普通に「圧縮機」と訳します。音のレベルを抑える(圧縮する)ためのプラグインです。大体どれも似たり寄ったりで、基本的なコントローラーに「Attack」「Release」「Threshold」「Ratio」が付いています。

その他、「Input(Gainの場合もあります)」「Output(Gainの場合もあります)」が付いているもの、Reductionメーターが付いているもの(どのくらい圧縮しているかを見るメーター)、「Knee(ニーと呼びます)」がコントロールできるもの(スイッチの切り換えだったり、レベル調整的にボリュームだったり、形は様々です)、「Auto Gain(入力に応じて圧縮を自動的に決めるもの)」が付いていたり、などがあります。

たとえばギターのコンパクトエフェクターのように、あらかじめRatioが固定されていたりする場合など操作子は減ります。DAWのプラグインでは操作子は多いです。

また、それぞれの操作子の機能は「ハードコンプの機能 その1」と、「ハードコンプの機能 その2」に書いていますので、ご参照ください。

基本的なものですので、どんなDAWにも必ず付いています(付いていないのはないのでは?)し、どこでも使えます。必要ならば2段掛けなども普通にあります。
 

マルチバンドコンプレッサー

multipressor.jpg

周波数別に複数のコンプレッサーが同時に動作するコンプです。大体が3バンド以上で、3~4バンドであることが普通です。

大まかな周波数別(低域、低~中域、中~中高域、高域という感じ)に、コンプの効果を分けることができますので、ソースによっては結構フラットに仕上げることも可能ですし、逆に音楽ジャンルに特化した仕上げ(たとえばベードラが要のHiphopやトランスなど)も可能です。

使いどころは、どこでも使えますが、周波数別にコントロールできることから、マスタートラック(最終段)で使う事が多いです。マスタリングで使う事もしばしばあります。これもDAWには普通に付いているのではないでしょうか?
 

バスコンプレッサー

dcam_free_comp.jpg

最近、よく聞く名称ですが、ヴィンテージ系のシミュレートプラグインで良く目にします。たとえば、Waves社の「SSL G Master Buss Compressor(SSL 4000のシミュレート)」とか、fxpansion社の「D CAM Free Comp(SSL 4000のシミュレート)」、Waves社の「V-Comp Master Bus Compressor(Neve 2254のシミュレート)」などが有名どころです。

昔の卓は「音をまとめる」だけのものですから、少ないトラックのレコーダーに対してバスでまとめて出力しました。そのバスチャンネルにかかるように用意されたのが、このバスコンプレッサーです。

特長としては、まとまった信号が入るバスですから、極端な音作りというよりは、自然な掛かりでそのバスに入った信号全体に薄く掛けるという使い方です。ですから、音を作り替えるほどの圧縮率(Ratio)は持っていません。大体1:6~10くらいまでの軽めのRatioがほとんどです。

とはいえ、バスコンプはほとんどが後付けのカスタムコンソールであることが多いので、独特な味付けがあります。極端に言えば「通すだけで音が変わる」ということがままあり、その軽めな自然さと独特な音質で人気が高いプラグインが多いです。同系統の楽器をまとめたバスはもちろん、楽器単品でも良く使用されます。
 

マキシマイザー

loudmax.jpg

俗に「音圧増強プラグイン」としてよく使われます。マキシマイザーは「小さい音はそれなりに、大きい音はより大きく」という感じで対数的に処理されます。

言い換えれば、コンプが小さい音と大きい音の差が詰まってダイナミクスを失っていくのとは逆の動作イメージで、ダイナミクスを稼ぐために小さい音と大きい音の差が広がっていくのが、マキシマイザーです。ですから、全体的な音量を稼ぎやすく「音圧アップにはマキシマイザー」と言われているようです。

呼び方も様々で、Logic付属では「Adaptive Limiter」、一般的には「Peak Limiter」とも呼ばれることもあります。

使い方としては、ほとんどがファイナルミックス時やマスタリングなど、行程の最後のほうでの音量調整がほとんどです。個別の楽器にはほとんどといっていいほど使われません。先の説明通り、わざわざ個別の楽器に掛けるくらいなら、最初の音源の録音がしっかりしていないとだめなわけで、それができているなら(つまり抑揚がしっかり出せているなら)マキシマイザーも必要ないと言うことです。
 

リミッター

limiter.jpg

一般的にはコンプのRatioが1:∞(無限大)のものがリミッターです。簡単に言うと、ある一定のレベルから上は出さない、決めたレベルまで強制的に抑え込んでしまうのがリミッターです。

なので、あまりミックスに使われることはないと思いがちですが、プロはそうでもありません。当然オーバーレベル分は圧縮されるわけですから、音質が変わるのです。これを考えると、最後のマスタートラックの段(最後のOutputトラック)に、常に入れておく方もいるようです。

リミッターにはほとんどの場合、ゲインリダクションメーターが装備されているので、それを確認しつつあまりにもリダクション量が多くなってくるようであれば、オケ側(通常トラック=楽器やバスなど)のレベルを落とす必要があると判断します。

また、特にスラップベースを含む場合にリミッターを使う事があります。演奏中のスラップ時には一瞬で極端にレベルが跳ね上がるので、これを抑制するためです。

なので、使う場所はミックスではほとんどの場合で最後段、先ほどのベースの場合やPAでの過大入力抑制(スピーカー保護など)に使います。
 

サチュレーション系

p_and_m_analoger.jpg

最近、僕がはまっているのがこれ。サチュレーションとは「飽和」を意味し、主にチューブサチュレーション、テープサチュレーションなどが最近の流行です。チューブ(真空管)にしてもアナログテープにしても、独特な飽和感を持っています。

この飽和感とは、ある一定のレベルに対して少々の過大入力を行うと、ある程度まではカバーしながらそれ以上は歪みとなって現れるというものです。ですから「ある一定レベル」までは抑えながら、はみ出てしまった部分は歪んで倍音となって現れます。サチュレーションがダイナミクスに含まれる理由はここにあります。

特に、真空管やテープを模したものなら、当然ながらアナログ機器のモデリングと言うことになり、それが特定の機種だったり(いわゆるヴィンテージ系ハードウェア)、回路だけだったりと、いずれにしても、求める効能は「アナログの質感」です。これが一番反映しやすいのがサチュレーション系なんですね。

kramer_mpx.jpg

それともう一つ、テープにしろ真空管にしろ、その飽和感による歪みは、コンプなどに比べても独特で、そして極わずかという演出が可能です。コンプでも極わずかな歪みはできますが、テープで育った世代にはすごく暖かみがあって良いのです。その自然な歪みは倍音も出るようになり、存在感を与えてくれます。

使えるところも選びません。どこでも使えます。また、テープ系ならテープ独自の揺れ(ワウフラッター)もあり、ある意味そうした不安定感がより音楽らしく仕上げてくれます。MacではFreeの数が少なく、Windowsならたくさんあります。通常の商品なら、Macも結構でています。当然ながらとても優秀なものです。
 

レベリングアンプ

la2a.jpg

本物で言うとTeletronix LA-2Aに代表されるコンプがこれです。操作子がレベル(Gain)とリダクションしかなく、基本は出力ゲインを一定にして見合うようにレベルだけを調整します。すごくシンプルなものですが、「レベルを一定に保つ」という要素からダイナミクス系に属しています。

プラグインではLA-2Aのシミュレーションはもちろんのこと、ただのゲイン調整だけ(つまり1ボリューム)のものもあります。「ゲイナー」という場合もありますね。

これも使用用途は選ばないのですが、ギターに使われることが多いですね。理由はわかりませんが、Line 6 Podシリーズにもコンプとして起用されてますし、MOTUのオーディオI/Fに付属のCueMix FXというアプリにもコンプとして内包されています。スタジオなどでもギターには良く使用されるそうです。AGC(オートマティック・ゲイン・コントロール)というのも秀逸であり、音質的にもこのエレクトロオプティカル(簡単に言うと光センサー)による圧縮感が気持ちよいことが多いようです。

 

その他、ダイナミクス系に分類されるもの

DeEsser(ディエッサー)

簡単に言うと「サシスセソ」の歯擦音を和らげるためのボーカル専用エフェクトです。サ行の発音は空気が混じるので、どうしてもマイクに対して(息を)吹くことが多く、言葉がはっきりと聞き取れなくなるため、それを抑える働きをします。
 

Ducker(ダッカー)

これはコンプのサイドチェインを利用したものです。一定のメイン信号が流れているときにサイドチェインに入ってくる信号をトリガーとして、メイン信号のレベルを下げるというものです。良くラジオなんかでBGMが流れているときにアナウンスが入るとBGMの音量が落ちます。これをエフェクトベースで実現したのがこのダッカーです。Duckの語源は「竦める(すくめる)」です。縮まるイメージですね。サイドチェインが付いたコンプならすぐに実現できます。
 

Expander(エキスパンダー)

コンプが「圧縮」に対して、エキスパンダー(エクスパンダーと呼ぶ場合もある)は「伸張」です。コンプが圧縮比を1:○○と表記するのに対して、エキスパンダーは○○:1になります。詳しくは「ハードコンプの機能 その2」こちらに書いてます。
 

Noise Gate(ノイズゲート)

なぜノイズを消すエフェクターがコンプと一緒かというと、上記エキスパンダーとRatio比が違うだけなのです。これも詳しくは上記リンクを参照してください。
 

Enveloper(エンベロープ、エンベローパー)

Logicのコンプのカテゴリーには、これも入っています。操作子はほぼコンプと同じで、「Attack」と「Release」で時間を決め、「Threshold」で効き始めるレベルを決め、出力レベルを決める、と書くと、コンプと同じことがわかります。シンセのエンベロープ同様に、効果自体は決してコンプとは言えませんが、遠からずというところです。