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マスタリングでの音圧稼ぎ、その前に...

2012年 06月 07日 17:33 | カテゴリー: DAW , Mix
2012年 06月 07日 17:33
DAW , Mix

すいません、タイトル変更です。予告では「その前に...」が付いてません。どうしてもやることがあったので、変更しました。

マスタリングに行く前に全体の流れの中で抑揚をつけておきましょう。これができると最終はコンプ(マルチバンドコンプが理想)で慣らして音圧調整です。ここまでくればマキシマイザーのような無理に波形をブーストするようなものもほとんどの場合で必要ありません。っていうか、ここでマキシマイザーを使うようなプロはいませんと言い直した方が良いかもしれません。だから昨今ネット上でも目にするように、猫も杓子も「音圧アップはマキシマイザー」と思っているのは、まあ、素人の考えです。本来は、いらないモノでもあるわけです。というか、その前にちゃんと作り込めることが、ミックスの常套手段であるわけです。

 

最終調整

で、全体の流れですが、例を挙げましょう。一時期ニコ動でも流行りましたが、flipSideの「only my railgun」(アニメ「とある科学の超電磁砲」の1stオープニングテーマ)ですが、これ、曲の始まりと曲の終わりとで、おおよそ1.2~最大瞬間1.5倍くらい音量が違います。そして、後半に行くほどトラックの密度が濃くなって、音圧が上がっていくのがわかります。

さらに細かく調べると、全体で+6dB程マキシマイズされており、良く歪んで聞こえないなと言うのが正直なところ。それもこれもうまいオートメーションがあってこそなんです。

よく聞くと、先ずはボーカル、次にバックグラウンド、それとオブリガートの音がでかいシンセの大きく分けて3パート分のコンプの設定が違います。

ボーカルは、途中のブリッジ(ギターソロ直後のボーカルサビ部分)以外の部分では割とボリュームが一定です。出だしの言葉と、フレーズによっても抑揚は付いています。ほとんどの部分で、最大音量を稼いでいます。コンプ的には、やや深め(-3~4dB)くらいをかかりっぱなしで、ややゲインを稼いでいます。

対してバックですが、先に書いたようにイントロはおよそ半分くらい、徐々にボリュームが上がって、最後にはボーカルとほぼ同等と、全体的に後半に行くに従ってクレッシェンドしています。ですが、さすがはプロ、アレンジがうまいのでA/Bメロの前半とブリッジで、バックのインストを抜くことでメリハリをつけています。ですが、この部分薄く感じることがないのは、エフェクトによる壁が十分にできているからに他なりません。ですので、細かくは増減ありますが、全体で見るとオートメーションでのボリュームがクレッシェンドしています。最後のサビ部分でコンプが(おそらく)-4~6dBほどかかりっぱなしです。ボーカルより若干強めと言うことで、ゲインの調整がなされています。

突然入ってくるでかいシンセのオブリガートは、確実にオーべーレベルです(笑)。ですがそこにプロの腕が活きてくるわけで、コンプをがっつり効かせてレベルオーバーを防いでいます。または、若干歪ませているかも知れません。軽く聞いている分には、歪んで聞こえないのは、シンセ音が派手というところ。ですが、こうしたところでプロの音選び、音作りの差が出ます。SAW系の耳に付く音、言い換えるとブラス系のアタックが0(早い)で、ストリングスのような伸びがあり、ベルを伸ばしたようなキラキラ感のある音です。まあ、レイヤー使うと簡単に作れる音ですが、全く同じ音となると、たぶんVirusとかNord Readなどのデジタル系シンセでしか出なさそうな音です。このコンプは音に圧縮が必要のない割と一定な音なので、さほどコンプ感は感じません。だから、軽い歪みで補ってるのかもしれません。問題はゲインです。ここを(たぶん)聴感上ボーカルと同じ大きさにすることでSaw系の耳のつんざける音がより大きく(目立つように)聞かせているはずです。

ざっと聞いた感じはこんなところまで分析できます。こうしたところを踏まえて、コンプをかけるにせよ、特にボーカルは抑揚が必要ですので、オートメーションの設定が重要になってきます。

 

オートメーション

オートメーションは、昨今のDAWソフトならたとえ廉価版でも設定が可能です。それほど重要であるわけです。各リージョン別に抑揚が付いていてもミックス時点では暴れるだけですので、曲全体を見ての抑揚をつけなくてはなりません。コンプをかけるにせよ、コンプを和らげて、抑揚がありつつ、レベルを一定に保つことが、マスタリング時にさらに音圧を稼ぐことが可能なわけです。

特にボーカルでは多用されます。よく聞くのは「フレーズの頭の文字だけフェーダーを突いてやる」ことです。これにより、フレーズの頭がはっきりするので、その歌詞のフレーズが聴き取りやすくなります。もちろん、頭を突いてから戻しますので、多少の文字の滑舌によるレベルの差異はありますが、そこをコンプで慣らすというのが常套です。場合によってはEQを併用して頭の文字だけ少々明るく音を作る(当然これもオートメーションです)ように補うと効果的でしょう。ただ、あまりやり過ぎるとワウのようになるので、わずかにレベルを上げるか、パライコでちょっと周波数を上に振るか(これをやり過ぎるとワウになります)、などの様々なやり方はあります。

もう一つは低音域です。曲の音圧を上げることを邪魔するのはこの低音域なのです。音圧が欲しいばっかりにベードラを極端に上げるのを耳にしますが、これが逆効果で、確かにバランス的には大きくてもマスタリングの時点で音圧が上がらないことがままあるのは、これが理由です。ですので、レベルが一番増減するのはベードラやベースなどが鳴るときです。特に同時に鳴る小節の拍頭などがそうです。プロがやるには腕の見せ所で、ここを比較的一定にできれば、マスタリングでの音圧稼ぎが楽になります。

前回の記事(「音圧が稼げるミックス技」の「壁の作り方 その2」)で説明した、AUXトラックによるエフェクトのまとめを応用して、ベードラとベースからBussへ出して、2本を1本にまとめたAUXトラックにコンプをがっつり掛けてレベルを平坦化し、そのトラックと生のベードラとベーストラックの計3本でバランスを取ります。AUXトラックをやや音量高めにすることで、ベードラとベースをきれいに圧縮したところに、生トラックで抑揚をつけるように補います。すると生トラックのミックスほどレベルの上下しないトラックができるので、バックに応じてこのAUXトラックにオートメーションを書いてレベルを揃えます。前述の「only my railgun」のように後半盛り上げるのであれば、イントロからエンディングに向けてボリュームが上がるように書けばOKです。当然、このAUXトラックのバランスがキモであることは言うまでもありません。

また、このときにPre出しでAUXに送るか、Post出しで送るかは、好みです。上記説明はPre出しです。Post出しにすると生トラック(ベードラとベース)が出なくなる(音量を含めて全部AUXトラックに流れる)ので、全部コンプが効いてしまい、抑揚がなくなります。最近の打ち込み系の、特にアニソン当たりならこれでも良いかもしれませんが、普通はPre出しでバランスを取ります。これまた、難しくもあるのですが...。

 

そうして、マスタリングに挑むわけですが、ここでも注意点がありますので、次のタイトルは...今度こそ、「マスタリングでの音圧稼ぎ」です。