Mix

音圧稼ぎには下準備が必要

2012年 05月 09日 04:00 | カテゴリー: DAW , 録音 , Mix
2012年 05月 09日 04:00
DAW , 録音 , Mix

基本はあっても正解のない、応用が無像にあるのがミックスです。そのミックス次第で曲の出来が大きく変わるわけですが、最終のマスタリングでも変わります。でも、その前である録りがしっかりしていないと、ミックスもマスタリングも成功しないと言っても過言ではありません。

プロももちろん音圧稼ぎしますが、マキシマイザーやコンプなどをがんがんに駆使して仕上げているわけではなく、下地作りが重要であることがちゃんとわかっていて、エフェクトはさりげなく使っています。場合によってはマキシマイザーなんて使うことはありません。でも仕上がり良いんですよね。

今回は、良く耳にする「音圧が上がらない」時にはどうしたらよいのか?ちゃんと理由があるので、まずはそれらの下準備ができているかどうか、確認してみてください。

 

レベルがちゃんと録れているかどうか

ギターの生録(マイクでもラインでも)なんかに多いパターンです。また、打ち込みドラム音源などで、パラってなくてステレオで出している場合のバランスの悪さでもあり得ることです。

「あとでノーマライズすればいいや」なんて思っていると大間違いです。本来は0dBを目標に、実際はオーバーレベルにならないようにー8~-5dBくらいを録れるとOKなんですが、インプットフェーダーを0dBにしたままなら、メーター見て半分以下では音圧があるモノも上がりません。

nomalize.jpg

これは録ったリージョン(フレーズ)を波形で見るとわかりますが、様々な理由(ノイズや一瞬のクリッピング)で飛び抜けたピークがあることが多いので、ノーマライズ(ノーマライズについては後述)でも上がりきらないことがあります。このときにはピークをサーチ(Logicですと「ピークを検出」コマンド)で、ピークを見て、波形を書き直すか、(音にもよりますが)最初に軽くコンプをかけてレベルを慣らしてそれからノーマライズとなります。

ですが、これも図のような一瞬のクリッピングであれば、元のレベルが高ければ平均的レベルが上がります。ですからコンプでニュアンスを変える必要もないので、「レベルは歪まないように高めに録る」のが定石です。

 

全体の音像が見えているかどうか

Positioning.jpg

雑誌などでよく見かけますが、音像表とでもいいましょうか、各インストの左右、奥行きの置き場所を書いたモノです。これで音像が見えていると、だいたいどんなエフェクトを使うか、各インストの隙間はないかなど、曲全体の厚みが見えてきます。

昨今のアニソンのようにとにかく音を入れまくるような曲では割と音圧は出しやすいわけで、ほとんどの場合、各インストにはコンプのみ、マスタリング時でもマルチバンドコンプくらいで済みます。あとはオートメーションによる音量書きで曲全体のダイナミクスを作ります。

音源が少ない、隙間を大切にした曲では、曲のダイナミクスが重要になりますので、それこそコンプでつぶしたりはできずに、前述のレベルが最重要です。

あとはどちらにしてもリバーブなどの密度で厚みを作る事も可能ですし、ディレイの返しでトラックを増やして音像を追加することでも、曲の音圧を出すことは可能です。

全体の音像を把握することは、必要なインスト、その置き場所などのバランスや、エフェクトの選び方や効果など、一見音圧とは離れているようなことも、重要なファクターであるので、見直しすることで、十分音圧を得ることも可能です。特に空間系エフェクト(ディレイやリバーブ)は薄い曲を厚くするために不可欠なエフェクトです。送り(掛け)具合で十分な音圧が出せます。

 

ステレオ音源(ファイル)は扱いに注意

ステレオ音源をステレオで録るのは普通なことですが、再生トラックのパンには注意です。たとえばLogicですとステレオトラックはパンがバランスになり、左右最大(-64~63)になります。パンは言い換えると左右方向へのボリュームですから、左右最大であるならとにかく前に出てきます。

時にこれが邪魔になるときが多いわけです。引っ込めようにも音像はセンターで聞こえますから、メインのボーカルやソロ楽器とぶつかってしまうので、ボリュームを下げると、思った以上に結構下げることになり、音圧が減るわけです。かといって、パンを回そうモノなら左右どちらかには100%出ているわけですから、偏りが出てミックスしにくいわけです。

ProToolsでは、ステレオトラックには2つのパンが付いていますので、幅を調整することができます。パンについて詳しくは既出の記事「DAWのパンについて知っておくこと」「インスト(楽器)のパン設定」をご覧ください。

ちなみにLogic Pro 9では、ステレオインターリーブがデフォルトなので、「環境設定」→「オーディオ」タブ→「ユニバーサル・トラック・モード」をオフにして、奇数トラックにファイルを置いて、偶数トラックと2本ペアでバランスから左右トラックのパンにすることができます。必要ならば奇数トラック上のリンクボタンを押すことで、通常のステレオトラックに変更できます(このときペアの偶数トラックは「ステレオ・オブジェクト“~”によって制御」と表示されて使用できなくなります)。

「インスト(楽器)のパン設定」では、Logic 7では「ステレオインターリーブをスプリットファイルにする」コマンド~と書きまして、8から仕様変更と書きましたが、これが仕様変更部分(やり方だけですが)です。

 

ノーマライズ

主に上記3つがちゃんとできていれば、音圧を稼ぐことも意のままです。素材の良さは出来具合に匹敵しますので、エフェクトに頼らずとも自然なままミックスして、自然に音圧は出ます。とは言っても、それでもノーマライズにはお世話になることでしょう。

ノーマライズは、そのリージョンの最大ピークをサーチして、100%(または設定値)までレベルを上げるコマンドです。注意点は前述のクリッピングノイズです。これが邪魔して上がるモノも上がりません。

ですのでクリッピングノイズは、波形を直接書き直して取り去るのが一番です。先に「コンプで慣らして~」と書きましたが、できればこの段階では避けておきたいです。なぜかというと抑揚がなくなってくるからです。たとえばスネアなどのようにパッツンパッツンにつぶしてレベルを慣らすならOKですが、故意につぶすとニュアンスがなくなります。

私が良くやる手は、Logicでピークの設定値を95%に落とし(場合によっては90%まで)、クリッピングノイズを取ってノーマライズを掛け、「ゲインを変更」でゲインを上げて音圧稼ぎをします。これは、ピークの差である5%(~10%)のマージン分ゲインを上げるため、ノーマライズと同等です。さらに通常のノーマライズより気持ちオーバーレベルにしてゲインを上げることも可能です。ですからマキシマイザーのように不自然になることもありません。

マキシマイザーの場合は波形を対数的に崩すため、サステイン~リリースが割りと普通に残ります。ですから、余韻が不自然になる(ディケイが崩れる)場合があります。打楽器のように短い1ショットものならともかく、余韻があったり、揺れのあるリージョンには、マキシマイザーはまず使いません。アタックばかりが強く鳴るので、後がスカスカになります。マキシマイザーを使って必ず音圧が上がると思うのは大間違いで、音量がうるさい(つまりアタックばかりが目立つ)だけで、音圧はかえって上がらなくなる(と感じる)こともあるのです(オケ次第です)。

 

この音圧稼ぎの記事は内容濃いので、例によって連載になります。

次は、「音圧が稼げるミックス技」です。