録音

「リアンプ」の大きな勘違い

2012年 04月 21日 08:08 | カテゴリー: 録音
2012年 04月 21日 08:08
録音

最近いろいろなところで聞くことがある「リアンプ」。確かに広義な意味では、どれも一緒なんですけど、雑誌ですら適当に使われる言葉になってきたので、ちゃんと理解をしておこうと思ったわけです。

 

そもそも「リアンプ」とは?

本来の意味は、「一度録音したトラックを元にして再生し、スピーカーから出た音をもう一度録音する」ということなんですが、どうも最近は意味合いが変わってきています。

もともとは、ベースのD.I経由ライン録音の音がベターっとしたイメージなので、空気感を得るためにアンプに戻そうとするのですが、レコーダーの出力とアンプ入力のインピーダンスが合わないので、D.Iの内部配線を変えてアンプ入力レベルにして、アンプを鳴らしてマイクで再録したところが始まりのはずです。ですので、リアンプも当初は「逆D.I」とか呼ばれていたんですね。

それが最近、特にギターなんかでは、「モニターはアンプシミュレーターを通し、DAWに素の音を録音して、そのトラックをベースに、アンプシミュレーターソフトなどで音を作り直す(別なアンプモデルに差し替えたり、歪み具合を変えたりなど)」というのを散見します。

これ全然意味ないことがわかるでしょうか?だってこれなら普通に録ってプラグインで音作るだけだし、わざわざリアンプなんて言い方しなくても、ただのエフェクト加工です。確かに音を作り直せる安心感はわかりますが、一番重要な「空気感」が抜け落ちているんです。さらに言うなら、その再生するスピーカーでも、録るためのマイクでも音は変わるので、それらある種のフィルターをかますことが「リアンプ」の醍醐味なんです。

 

アンプシミュレーターではリアンプになり得るのか?

はっきり言ってなんにもなりません。たとえばPod X3にもPod Farmと言うプラグインがあり、これを併用することでDAW上でリアンプが可能になります(正確にはドライバーのDryの出力ポートを選択することで、Dry録音とエフェクトモニターが可能)。

でもですよ、考えてみてください。わざわざ素の音録って、配線変えて再度音作りして、また録音...なんてやるより、普通にPodで音作ってそのまま録った方が早いでしょう。Pod上での音作りと同じ時間をPod Farmでもかけるわけですから、時間は2倍以上かかるわけです。

問題の「空気感」にしてもアンプモデルのマイクセッティングで作れるとは言え、本当のスピーカーを鳴らして音を録るのとは格段の差が出ます。特に再生するスピーカーというのは前述のベースの例では、ベースアンプに戻すのではなくレコーディングモニターという遙かに再生域が広いスピーカーでやることで、本来ベースの持つレンジの広い音を録るのが目的だったわけで、ベースアンプに比べればレンジが広いことこの上ないところに、空気感という自然さが加わることで、ライン録音の不自然さを払拭したわけです。

また、あえて言うならば、ギタリストなら自分の音で弾きたいですよね。もちろん曲を仕上げる際には他パートとのバランスで、ただでさえ音質はミックスで変わるので、録音時には既に自分の音であるべきなんです。そうすれば、たとえ外部のエンジニアでも基本は本人の音を尊重しますから、極端に変わることはありません。だから別にアンプシミュレーターを使ったからと言って、「(間違った意味での)リアンプ」なんて必要ないはずです。

というか、ギタリストなら「リアンプ」なんて頼らずに、ちゃんと自分の音で弾いてもらいたいです。自分の音を持っていないから、直しに頼る訳なので、ギターソロの一発録りと同じで、エディットなんて考えず、がんばって弾いて欲しいです。その方が腕も上がるし、うまい人は自分の音をちゃんと持っているし、作れるので、個人的に本来は必要のないテクと思っています。

 

ではどこで使うテクニックなのか?

そうですね、一番有効と思われるのは、エレアコでしょう。ライン録音で弦だけの音になりかねないサウンドに「空気感」をバランスよく追加してふくよかさを出すことが可能です。似たようなところでは、ピエゾPUで鳴っているエレガットや、前述のベースのD.Iによるライン録音などがそうです。アコースティック系には有効と思われます。

またシンセなどのライン録音も、チューブプリなどを通すと音質が太くなったりします(これをリアンプという困った人もいます)が、この場合は普通に卓でチャンネルストリップをインサートするだけでも効果的ですし、ノイズの面ならリアンプより有利です。シンセのピアノ音とかならリバーブではない自然な空気感が欲しい場合によい方法です。

再生スピーカーをモニタースピーカーにすることで、広いレンジ感、特にきらびやかさを保ったままの空気感を出せるので、少し独特ではありますが、音の深みと言う部分では効果的かと思います。この場合は、もちろんコンデンサーマイクで録ってくれるといいですね。

また、本当のアンプに戻す場合には、電子スイッチ付きのコンパクトエフェクターを挟んでやるとアンプに適したインピーダンスを簡単に得られます。ですから、本来のアンプに戻すにも有効ですし、マイクセレクトで音質換えを狙うのも良いでしょう。さらにアンプのセッティングを微調整して、それこそフラットに持って行くこともできますし、より癖をつけることも可能です。

エンジニアとして「リアンプ」と言うテクは必要かも知れませんが、ギタリストには、意味ある効果として使わない限り、特にアンプシミュレーターなんぞ使う限りは、普通に録ればいいし、リアンプする時間があったら、他に回した方が作品の質が上がるでしょう。

 

リアンプ専用の小物も出ているけど...

これもレコーディングスタジオならあっても良いけど、別に個人持ちする必要はないでしょう。ほとんどが逆D.I(ロー→ハイ)のインピーダンス変換器です。細かく言えば、フェイズスイッチやレベルなども付いていますが、レコーダー出力とアンプ(オーディオまたはインスト用)入力インピーダンスを合わせられれば良いだけなので、再生スピーカーに合うようにしてやればよいのです。

別にレコーダー(MTRでもiPodでも)があれば、そっちに書き出して別なシステムで鳴らして、再度DAWに取り込んでも同じことですし、この方がCPUの負荷は軽いのでハイパワーマシンでなければ、こうした分割録りも手です。

でも、やっぱりギタリストなら、ちゃんと音を作りましょう。後でやり直すとそれこそ時間の無駄です。正直、味付け程度のテクですから、音作りやミックスの腕があればカバーできます。くれぐれも本来の意味を忘れずに、雑誌などには振り回されないようにしましょう。プロでも必ずしもやっている技ではありませんので。