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プロの小技 「テンポ揺らし」

2011年 12月 28日 12:41 | カテゴリー: DAW , Mix
2011年 12月 28日 12:41
DAW , Mix

更新もままならぬのに、ご覧いただいてありがとうございます。

以前の記事「ボーカロイドのデータ作成~DAW上での打ち込み」で書いていた「テンポ揺らし」の件で、また後日といったものの、まだ書いていませんでした。今回は現役のボカロPさんから、このリクエストをいただきましたので、書いていきましょう。

 

そもそも「テンポ揺らし」とは?

既存曲をDAW上に読み込んで、打ち込みのコピーをするような場合、CDなどからリップした曲が、なかなかテンポが合わなかったことがあったりしませんか?頭で合っていても、サビまでくると微妙にずれている...という経験は、DAWで曲を作っている方なら一度は経験していると思います。

だいたい1曲中で、意図的なテンポチェンジ(ルバートなど)を含めないで、おおよそオープニング、Aメロ、Bメロ、サビ、間奏(ソロ部)、Cメロ、ギミック、エンディングなど、基本的に分けられるところで揺らす場合が多いです。

また、生バンドの演奏を考えてみるとわかりますが、

  1. イントロからAメロの出だしあたりでテンポ落ち
  2. Bメロからサビの盛り上がる部分でテンポアップ
  3. サビから間奏に移るところでテンポアップ
  4. ブレイク時は、任意にずれる(揺れる)
  5. リズムバンプ系では、割と一定テンポですが、その時に鳴っているメインの楽器が走りやすい(突っこみやすい)傾向

などなど、いろいろな傾向が考えられます。

そもそも、昔は生バンドの生録でしたからテンポが揺れるのは当たり前、さらにレコーディング時はテープですから、何回もPlay & Recを繰り返せば、テープ自体の伸び、レコーダーのキャプスタインやモータートルクのぶれ、デジタルの領域ではワードクロックの揺れといった、テンポが一定でなくなる(揺れが出る)要素はたくさんありました。

ところが、昨今のDAWの制作上では、基本テンポは一定に保てます。まあ、Pro Toolsのようなレコーダー的DAWならガイドも生で録れば、揺れまで再現できます。ですが、ボカロPなどのように一人、または複数人でデータをやりとりする場合には、テンポは一定であった方がやりやすいわけです。ですが、曲はそんな一定のテンポを保った曲より、1/f揺らぎを持つ方が自然であり、人間味あふれる、聞きやすい曲になるわけです。

そこで、「テンポ揺らし」と言うテクニックが、必要になってきます。わざと一定テンポの中に揺らぎを作ってやるわけです。

 

テンポ揺らしの注意点

実際は、単に任意のポイントで基準テンポを±1~2bpm程度調整するだけ...といえば、それだけなんですが、注意点をいくつか挙げておきましょう。
 

1. 全トラック収録後にテンポ情報を書き込む

これが絶対条件です。特にMacユーザーでWindowsでボカロデータを作ってインポートする場合には、先にテンポを揺らしてしまうと、書き出したボカロWavデータにずれが生じます。また、WindowsユーザーでもReWireによる同期を取る場合などCPUパワーが足りなくなってくると、処理に時間がかかり微妙にずれてきます。ですので、基本は同一DAW上に全トラックデータを載せて、ミックスをある程度進行させた状態で、テンポ情報を書き込んでいきます。

まあ、一番都合が良くやりやすいのは、2ミックス書き出し後のマスタリング時です。これなら確実に全体に揺れを作れますので、デジタルフェーダーなどのハードウェアコントローラーを使ってオートメーションさせるとやりやすいです。

「ミックスをある程度進行させた状態」と言ったのは、エフェクトで時間軸に影響が出るもの、たとえばフェイザーやフランジャー、ディレイなど周期や、正確に繰り返す音が出てくる場合に、これらを済ませておかないとテンポの揺らぎがきれいに決まらない場合が出てきます。逆にそれがラフで良い場合もありますので、そこは作り手の意志で、判断してください。

ちなみに先の記事中には「ミックス直前に...」と書きましたが、これは次の場合に当てはまる時は有効です(自分がLogicなのでできるつもりで書いてしまいました。m(_ _)m)。
 

2. DAWの波形編集機能を積極的に使う

まずはご自身のDAWをチェックして欲しいのですが、強力な波形編集機能を持つDAWならミックス直前にテンポ揺らしをかけて、強引に波形をテンポに合わせ込むことができます。微妙なテンポ揺らしでも曲の雰囲気は変わってきますので、先に雰囲気を確認してボカロWavデータだけを合わせ込みたい場合に有効です。

Logic Pro 9ではFlex Time機能やGroove Machine機能(応用は必要)、Pro Tools 9ではエラスティック・タイムなど、波形をダイレクトにテンポの方に合わせ込むことのできる機能があれば、特定のリージョンのみテンポ変更に合わせたエディットが可能です。

テンポ揺らしに対応させるだけでなく、わざとブレスのタイミングをずらしたり、「ま」とか「な」などで始まるアタックの弱いボカロの歌詞を若干早めたりとか、細かいエディットにも対応できます。
 

3. タップテンポ機能があれば、そっちを使った方が人間っぽい

Digital Performerだとキーボードのスペースキーを使ったタップテンポが打てます。これの方が曲を聴きながらなので、結構自然な乗りが出せます。

ただし、結構集中力が必要です。実際に録音するとわかりますが、慣れていないと聞くのは一定テンポなのに、かなりずれます。笑えるくらいずれます。自分のリズム感がこれほど悪いかと落胆してしまうこともしばしばあります(汗)。まあ、タイミングを取ってエディットすると思っておいて良いでしょう。

タップでなくとも、曲中の変えたいタイミングにマーカーや音符を打って、それを目印にしてテンポを書き込んでも良いです。

 

テンポ揺らしの実際

テンポが揺れるポイントは前述の通りです。基本的には静かになる部分で若干テンポは落ち、盛り上がりなどの部分はテンポが上がる(走る)というのが、人間の感覚です。サビが覚えやすく、乗りやすいのも気持ちテンポが上がるためとも言えるでしょう。

さすがに5bpmもずれると、はっきりわかってしまうので、微妙な調整で徐々に流れを作ることが重要です。実際、タップテンポ機能を使うと自分でどの辺が走りやすく、どこがもたりやすいか、曲を聴きながら試してみることができます。

またオリジナル曲などでは、各ポイントの導入部分にはフレーズ的なおかずを入れておくと自然に感じます。たとえば、ベースのデュレーションを長めにすると乗りがゆったり感じますし、16ビートの曲でドラムによる3連を含むおかずを入れるとテンポを落としたように感じます。こうしたつなぎのフレーズも曲をスムーズに聴かせる重要な要素になりますので、ただ単純にテンポ揺らしだけ入れればよいということではありません。ここら辺が工夫のしどころです。

昨今のDAWならほとんどの場合テンポトラックというのが独立しているはずなので、修正、変更は簡単なはずです。あくまでも自然に、ごくわずかな揺れを加えるということで、エディットしてみてください。