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「Pray」のパート別ミックス技―ボーカル(Vocaloid)編―

2011年 09月 18日 02:39 | カテゴリー: Mix
2011年 09月 18日 02:39
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Pray-Vocal.jpg

さて、ボーカルです。ボーカルはご存知ルカ姉さんなわけです。癖があるんだかないんだか微妙なトラックとなりましたが、通常のボーカルでも使っているようなエフェクト効果をふんだんに使っています。

トラックは左よりメインボーカル、メインボーカルをコピーして作ったメインボーカルサブ、ハモリの1st、ハモリの2ndとなっています。ん?何でハモリ1にオートメーションが入っているんだ?しかもレベルが低い。やった覚えはないんだけど、ハモリがうまく出ていないから、たぶん隣り合ったギターのオートメーションを書くときにマウスをひっかけたかもしれません。Logicのオートメーションってエディット時にトラック幅狭いとすぐに引っかけるから、それが生きたままになっているようです。ごめんなさい(引っかけた痕跡が残っていました)。

では、メインボーカルトラックから行きましょう。

 

メインボーカルトラック

Vo-Main-wave.jpg

まずですね、ボカロからWAVを書き出した生の状態を見てみましょう。ボーカル出だしの波形なんですが、単語のフレーズごとにアクセントがついて意外と抑揚がついているのがわかります。ソフトなので発音はきれいですし、人間のような妙な揺れはありません。ビブラートもちゃんと効いているのがわかります。まあ、このくらいのトラックができれば、ロボ癖はあってもボーカルの仮トラックくらいにはなります。ニコ動に上がっているのを聞けば、調教としては中クラス程かも知れません。もっと時間をかけてちゃんとエディットすればボカロPも見えてくるでしょう。初めて打って小1時間でこのくらいなので、及第点としてください。

Main-vo-Gt-amp-pro.jpg

エフェクトの初段はGuitar Amp Proです。Guitar Ampといってもプログラムを「Clean Tube Amp」→「DI Box」として、マイクプリの代用として使用しています。歪みを付け足す要素ですが、メインですのでクリアさを保っています。また抜けを良くするためにEQの設定をModernにして効きを良くして、Bass=0、Mid=少々、TrebleとPresenceを稼いでいます。ここでのエフェクトは全てオフです。

次のコンプは深くはないんですが、Releaseが長くしっかり効く状態です。コレは先ほど見た波形のように暴れているボーカルを抑えるためのものです。これで、バランスも取りやすくエフェクト乗りも良くなってきます。それとLimiter Thresholdですね。確実に歪まないように設定しています。

Main-Vo-EQ.jpg

問題はEQです。かなり試行錯誤しました。ルカ姉なので、もちろんミクよりは少々太めでアルトな声質ですが、Analyzerを見ると意外とレンジが広かったわけです。コレがエディットしにくさを出しています。疑似マイクプリとコンプで整えたことで、コモリを抜きながら太さを残し、存在感を作りつつ、ハイの伸びを生かせるように、かなり大胆なEQ設定にしています。ちょうど奈々様の太い声にも通じるように仕上げました。設定については書くと長いので図を見てください。

原曲にある絶妙でダブリングにも聞こえないダブリング感とディレイは、メインボーカルのサブトラックにも関係してきます。

Main-vo-ADT.jpg

まずはADTです。これはLogicには入っていないFreewareのソフトです。前からあるのは知っていたので、今回はコレを使用します。ADTとは、簡単にいうとBeatlesのレコーディング時にJohn Lennonが「2度も歌いたくない」と言うわがままに、Abbey Loadスタジオのスタッフが開発したテープ式のダブリングマシンです。これをソフト化した人がいるわけです。

で、メインでは前に出る感じのダブリングにして、サブトラックでその後ろに鳴るようにPanを調整しました。擬似的に4本のメインメロディを鳴らしているわけで、力強いボーカルの演出をしています。その上でメイントラックとして1本に聞こえるようにバランスを調整しています。

Main-Vo-KR-Delay.jpg

それを包むディレイには、ADTを探しているときに見つけた面白いディレイを使っています。KR-Delay FS(コレもフリーです)と言うのですが、このKRシリーズには他にもありますが、面白そうなのはリバーブですね(今回は出番なし)。で、何が面白いかというと、ディレイ音をPanで振れるんです。従来コレをやるには、Stereo OutをAUXトラック2本にBus送りし、各AUXトラックでPanを振らなくてはならないと、結構面倒なルーティングが必要だったわけです。しかもちゃんとStereo Inにも対応しており、きれいにディレイ音が振れます。このKR-Delayはこうしたプロ技に対応できる秀逸なディレイだと思います。

さて、そのKR-Delayを使うと、原曲のふわふわしたディレイに簡単に対応できます。Panが自由なので、左右のDelay Timeを変えてメイン(センター)に寄せてやるともうそれっぽく聞こえます。

 

メインボーカルのサブトラック

本来ダブリングっぽく仕上げるには、トラックコピーして少々ずらすか、Sample Delayなどを使うか、などがあります。そして、ギターで良くやる手ですが、トラックコピーで違う音質を混ぜて太い音を作るとか、別々のマイクでアンプを取ってそれらを混ぜるとか、別々のアンプを同録してバランス取るとかがあります。

このボーカルサブトラックではその両方を使っています。初段のGuitar Amp Proでは、メインボーカルトラック同様にClean Tube AmpとDIのセットで擬似的なプリアンプは変わりませんが、こちらは歪みを入れています。歪みの効果は、倍音の増強、太さの増強で、このトラックをメイントラックとでバランスを取ります。

ですから、メイントラックのコピーですから、基本的な音質作りのEQとコンプは全く同じです。そしてADTはメインで書いたように少々引っ込むようなPan位置(このADTはPanというパラメーターで位相コントロールしているような音を出します)です。

そしてディレイは普通のステレオディレイです。クロスはさせていなくて、メインの調整した狭いPanを包むような広さのステレオディレイです。コレで原曲と同じような浮いたボーカルを仕上げています。

 

ハモリ1トラック

こちらはまともにハモるフレーズですので、基本設定はメインボーカルと一緒です。ステレオディレイの2段掛けは、初段が極短めのダブリングをクロスして出力させています。後段のディレイが、テンポを合わせたステレオディレイです。

 

ハモリ2トラック

これは最後の伸ばす音のハモリで、ビブラートがしっかりかかっている部分です。エフェクトは全てはハモリ1トラックと同じです。

 

最後はAUX2トラック

ドラムと同じようにBUS送りでAUX2トラックに入れてSpace Designer(リバーブ)をかけています。ただし設定はドラムのようにストンと落ちるようなエンベロープではなく(しかもこちらはROOMです)、ボーカル用のプレートリバーブで、最後のビブラートをきれいに聞かせるために、なだらかに落ちるようなエンベロープにしています。これが数多いディレイ成分を包み込んで、うるさくならないような奥行き感を醸し出しています。