Mix

「Pray」のパート別ミックス技―ストリングス、上物、ギター編―

2011年 09月 17日 09:57 | カテゴリー: Mix
2011年 09月 17日 09:57
Mix

Pray-st-fanta-gt.jpg

レコーディングとしては割と中盤である上物系です。ベーシックなリズム系で低~中域は固めてあるので、うまくバランスを取ってぶつからないように、また、奥行き感を出すことで、曲に広がりや厚みを持たせることにも使用するパートです。

この曲は特に目立つギターがあるので、どこまでをPODでの基本的音作りとするか、ミックス時にする加工をあらかじめ想定の上でPodの音を作り込むことも必要です。

まあ、どちらにしても入っているバックトラックの楽器やボーカルの違いでも変わってきますので、ベースとなる自分の音作りが大切です。

コレを念頭にミックスでの音作りをしていきましょう。

 

上物(ベル系)トラック

ここは原曲でもイントロに1カ所だけなので、普通に聞いていたら聞き逃しそうなところですが、雰囲気を持っているので、コレがないと締まりません。このサビイントロのボーカル最後のフレーズ、「蘇れ、僕の~」という歌詞部分とのユニゾンです。

音はとりあえずベル系なんですが、昔のRoland D50と言うシンセでブレイクした音で、「Fantasia」「LA Bell」などの音に似ています。雰囲気だけ持たせれば良かったので、ドンぴしゃな音とは言いませんが、ソフト音源トラックではGlockenspielを代用していました(トラック名が残っています)。しかし、アタックが強く、EXSの中にFatasiaらしきサンプルを見つけたので差し替えました。

Fantasia-PS.jpg

しかし音が良くない。こもっているわけです。EXSで作り込むのは面倒だったので、エフェクトで加工しました。その1段目がExciterで、15kHz以上を158%までブーストして高域をきらびやかにして、さらに2段目のFat EQで、下(低域)を大胆にカットしながら、9~10kHz付近をブーストして、かなり堅く音を作っています。Fat EQはChannel EQよりも大胆な音作りが可能になる強力なEQです。

それでも倍音感が足りなくって、もっと強引に出してみようとPitch Shifterを使って1オクターブ上をブレンドしました。2本に聞こえない程度で音量バランスを取っています。

あとは広がり感、ボーカルの後ろで鳴っている感じを出すのにリバーブで仕上げです。リバーブはGoldVerbで部屋の広さは先のアコースティックピアノと同じくらいですが、奥で広げながら鳴らすために深めにかけています。

 

ストリングストラック

音源は例によってSample Tankです。しかもOrchestra系のStringsです。PCM系のシンセが得意とするサウンドです。当然ながらステレオな訳ですが、良く聞くと(たぶん)ディレイによるダブリングのようなごく短いディレイで左右の2本をはっきりと出している感じです。

音源による普通のステレオでは、この左右で2本の感じはなかなか出ません。何かしら差をつけないと同じフレーズによる完全に分かれた音にはならないわけです。

Strings-EQ.jpg

オーケストラ系Stringsは割とレンジが広いので、こうした単音によるフレーズでも下(低域)がもわっとします。そこで、コンプで軽く整えてからEQをかまします。このEQでは大胆に200Hz以下をばっさりとカット。音源に合わせてざらつき感を出すために、5kHz付近をドカッと上げています。たぶんRoland系のStringsなら、ここまでハイを上げることはないと思います。

そして、2本の感じを出すためにディレイではなく、今回はSpreaderを使用しました。Logic内蔵のSpreaderは、左右の広がりと共に、Sample Delayが調整できます。コレで気持ち遅らせて、少々揺らしてやることで、広がり感と共に、2本の感じがうまく出せます。

リバーブかけても良かったのですが、Sample TankのReverbが効いているプログラムだったので、それを生かしています。ですので、リバーブも含めて広がり感が出ているので、ここまでうるさい部分なのに、はっきりと音が立つ独立感がでており、シンセリードと相対するサウンドに仕上がっています。

 

ギタートラック

ギターは芯となる音がすべてPODで作ってあるので、基本的には補正だけです。ですので1段目のコンプはいらないくらいですが、ブレイクもあるのでオーソドックスに2.5:1程度の圧縮で、ゲインの調整だけです。Podのほうで音はまとまっているので極端な突出などもなく、きれいな波形ですので、かかりっぱなしということもありません(ですからThresholdも深くないということです)。

Gt-EQ.jpg

Pod側でずいぶんと低音は稼いでいたので、2段目のEQで音質を補正します。トラック全体に馴染ませるため、60Hz以下はばっさりとカットします。抜けを良くするために5kHz付近を気持ちブーストし、ボーカルの太さ部分とかぶる500Hz付近と1.2kHz付近を気持ちカットします。そして、できるだけフェーダーをノミナル(0dB)に保ちたかったので、EQでGainを+1.5dBほど稼いでいます。

そして原曲で左右に広がる音像は、やはりディレイのダブリングっぽく仕上げられているので、ここではStrings同様にSpreaderを使います。Stringsではほぼ真横に広がるように少々深めだったのですが、原曲同様にギターは10時と2時方向の、Stringsよりもやや上に位置するような定位に調整しています。そしてもう少しStringsより前に出すためにSpreader内のChannel Delayを短めにしました。ヘッドホンで聴くとその雰囲気が良く出ています。

1つだけ失敗したのは、Speedと言うパラメーターで揺れを作るのですが、Soloで確認していなかったので揺れがきついままだったことです。コーラスのように揺れています。本来ならもっと落とすべきで、もっとストレートに音が出せれば気持ち補正するだけで良く、Podの優秀さが証明できたわけです。軽く変な引っ込み方しているのはコレが原因で、揺れが必要なければやはりディレイのダブリングで良かったようです。

gt-reverb.jpg

そして最後はリバーブです。コレも他のトラックのようにGoldVerbで合わせると同空間のように仕上げられるのですが、バッキングですのでディレイもかけてないものですから、GoldVerbよりもう少し密度の濃いリバーブでPlatinamVerbを使っています。

大きいRoom系の長いリバーブですが、ちょうど真ん中くらいにあるブレイクでリバーブがちゃんと残るくらいにRev Timeを設定しました。