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Logic Pro 8(9含む) コンプの謎

2011年 05月 10日 01:01 | カテゴリー: DAW , Plug-in Effects
2011年 05月 10日 01:01
DAW , Plug-in Effects

先の記事、Sound Makingの「SansAmp GT2 Boogie系の音」で、Logic Pro 8のコンプをじっくり使用してみたのですが、Logic Pro 7では、シンプルなSilverと基本的なCompressor、マルチバンドのMultipressorと3つあったモノが、Logic Pro 8からは一新されて1つのコンプに集約、その代わりモデリングを使って動作回路を変更できます。

Logic_Comp.jpg

その動作回路が何をベースにしているのかはもっとも気になるところです。これはAppleからの正式見解も現時点でなく、推測の域を出ないのですが、調べてみると気にしている人はいますね。実際私もその一人ですので、調べてみました。個人的主観もあります。

現在プリセットで用意されているのは6つです。動作原理の説明は、Bandの「生音の録音にはハードコンプを使う」でも説明しています。こちらもご参考ください。

 

動作原理別解説(かなり主観有り)

Platinum

これは元E.Magic社(ここがAppleに吸収されました)が独自に開発したモノで、Logic Platinum 5.5まで採用されていたコンプの最上位バージョンです(他にはSilverとかGoldというのもありました)。他のプログラムであったSilver、Goldなどに比べパラメーターが多く、最上位であったことが伺えます。でもたしかこの頃はSide Chainとかはついていなかった気がします。Logic Pro 7でこの名前はなくなったものの(Pro 6はあまり覚えていない)、8で復活したというわけです。

掛かりがカチッとしているので、VCA系かな?とは思ってましたが、いかがでしょうか?古くからLogicを使っているユーザーには安心感のあるコンプです。
 

FET

代表的なコンプではまず挙げなくてはならないのがUrei 1176でしょう。プロの間でもこの独特なコンプレッション感を求める人は多いです。そしてこの1176を再現したハードコンプなんてクローンも出てきています。最近ですと、Studio Erectronic社のC2Sとか、Slate Pro Audio社のDragonとかがそうです。しかも1176にあった裏技のRetioボタン全部押しモードも持っています(両機とも)。

これが本当の意味で1176クローンと言えるのですが、Logicではどうでしょう?コンプが一つに集約されたことでパラメーターが一般化しており、私には正直1176には感じられません。改良され、今でも1176LNとして残っていますが、その1176に残っているRetioボタンの4/8/12/20:1に固定してかけても1176っぽく無いんです。なんかもっと優等生的な効き方です。FETのモデリングであることは確かなのでしょうが、Appleも別に「このFET回路は1176をモデリングした」とは言明していないので、噂は絶えませんが1176とは言明できません。

それよりも先ほどのSlate Pro Audio社のDragonのデモページがあるのですが、それを聞くとこっちの方がずいぶん近い印象を持ちました(といってもDragonが1176クローンとも言えるので結局は1176クローンの一種とも言えるのかな?)。

Slate Pro Audio社のHP(DragonのAudio Demoページです)
(2018年11/12現在、Audio Demoのページがありません。製品ページに飛びます)

この一番上の「Original Drum Loop」が元音です。後はそれぞれセッティングの違いですが、「Super Smash Drums」というのが、いわゆる裏技の全部押しモードで、これは1176の感じが良く出ていると思います。LogicのFETはこれより前のプラグラムがどれもややおとなしめの設定が、似た印象です。つまり、「結構洗練されたFET」という印象です。まあ、1176のシルバーパネル(初期型と前期型)とかではよく言われる「通すだけで音が変わる」ことはまずありません。また、1176のクローンとして出回っているプラグインの方がよっぽど1176に近い印象です。
 

Opto

オプティカルとしてこちらも代表的なのは、Urei LA3、Teletoronix LA-2Aがヴィンテージタイプで挙げられます。これもAppleからの言明はないので、LA-2Aだ!なんて言い切っているのは、なんの根拠もないと思われます。ただ、有名機種と動作原理を当てはめただけのようです。

というのも、このOptoも一般的パラメーターに割り当てあられているので、Logicでは正直おいしいところをスポイルされている気がします。Pod X3にLA-2Aのモデリングがありますが、Pod Farm含めて、こっちの方がそれっぽい印象です。

ただ、特定の機種ということではなければ、オプティカルの雰囲気は良く出ています。ソフトニーの感じや効きの柔らかさはOptoならではという感じです。このプログラムは私も結構好きです。
 

VCA

ちょっと飛ばしてさきにVCAに行きますが、これもAppleからの言及はありませんので特定の機種とは言い難いです。ですが、SSL G-Master Buss Compressorとか、DBX 160Aとかいう人がいるわけです。確かに有名なVCAコンプですが、言及がなされない以上開発者しかわからないわけです。海外のとあるフォーラムで、同じお題目を延々と語っているスレがあって、結論が出せないところでため息しか出ないわけです。

ただ、これも機種を断定しなければVCAらしい効きの良いコンプです。立ち上がりが良いのでギターのカッティングなどにはうってつけでしょう。
 

Classic A_R

これはその海外のフォーラムで説明を読んで「ああ、なるほど」と思ったものです。Logicユーザーの間ではNeve 33609といわれています。何度も言いますが、決してAppleでは言及していません。

ただその推測が面白くて、妙に納得できました。よくやることですが、ネーミングを分析したもので、1)Classicであること、2)Class A回路を持った、3)Rupert Neve氏(Neveの開発者)の頭文字ということから、現行機種であるNeve England社の33609JDにスポットが当たったというところです。この33609のオリジナル機は1970年代後半にでているのですが、ちょっとClassicという言葉とは微妙な年代です。

Neve2254.jpg

調べると、この33609のベースになった2254(バージョンがAとかEとかいくつかあるようです)というコンプが1969年に出ています。こっちような気がしてなりません。ただ私も聞いたことは無いので何とも言えませんけど。

この2254Comp & Limiterでは、Ratioも1.5/2/3/4/6:1と軽めです。Limiterの方は強そうですが(本来は∞:1なので)、まあ時代背景を考えると、ディスクリートのClass A回路なので、33609と同じといえば同じです。

効果は気持ちいいソフトな感じです。Sound Makingの「アンプシミュレーター 一気に聞き比べ!」以降の記事では、これを使いました。つぶれた感じが無く自然な掛かりが良かったからです。
 

Classic A_U

一番怪しいのがこれです。先ほどのNeveの推測は良くできたモノと感心しましたが、こっちは??です。1)2)は先ほどと同じですが、3)の「U」というのは、ギリシャ文字ではこれを「ミュー」と読み、「MU」と英語にすると、チューブの専門用語で「Gain」という意味だそうで、オールチューブのコンプレッサーの代名詞というとFairchild 670だというんですね。

いや、確かに昨今のコンプ事情では、Beatlesのリマスタリングで当時の研究からAbby Road Studioで使用されていたFairchild 670は一躍有名になり、クローンのプラグインも多数で回っています。そうした流行を考えるとわからなくもないのですが、あまりにもこじつけているような気がしてなりません。かといって、すぐに別な憶測が立つわけでもないのですが...。

今は「Vaiable Mu」とはManlay社のLimiter/Compの登録商標なんです。「だからギリシャ文字読みにしたんだ!」と言われればそれまでですが、唯一真空管のみが今までの説明中にないので、そうなのかな?という思いもあります。でもそれなら別に「U」じゃなくてTubeの「T」でも良いでしょう。

私はFairchild 660/670のプラグインしか聞いたことありませんが、Logicのこれは、真空管っぽく無いんです。なんか歪み感が足りないというか、おとなしいというか、暖たか味がないというか。

 

結論

どれもそうですが、Appleの言及がない以上、詮索は無駄です。ただ説明したように代表的な機種で言ったりすることがあっても、決して特定の機種ではないのでしょう。研究はしているでしょうけど、特定の機種に限定はせず、オールラウンドに使えるようにLogic用にブラッシュアップしたというのが、私の感想です。

先にも書きましたが、「生音の録音にはハードコンプを使う」で、簡単に動作原理の説明をしているので、後は音を聞きながら、その特長を捉えながら使っていくのが一番かと思います。雑誌等で言及している人がいますが、未だに開発側からの言及はありませんので、惑わされないように。