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ミックスに使うプロの技 ハンドコンプ(修正再アップ)

2011年 04月 08日 00:44 | カテゴリー: Mix
2011年 04月 08日 00:44
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2011年5月5日 追記&修正

友人より「コンピングって別の意味だよ」と指摘を受けました。そういえば、最近のDAWでは「コンピング」という機能があり、これが複数テイクより1つのテイクを完成させる機能でありました。辞書を引いても「バッキングトラックのこと」と載っており、命名が違いましたので、修正します。本来エンジニアの間では「手コンプ」と呼んでいるモノを説明した記事です。なので、英語読みの「ハンドコンプ」と修正させていただきます。修正部分は赤字にしてあります。


いつもアクセスいただきましてありがとうございます。DTMの記事は、「意外と」どころか突然ド~ンとアクセス上がるのでびっくりしています。ネタは山ほどあるので、そろそろ濃い~のいっときましょうか。

「ミックスに使うプロの技」シリーズと題して(不定期ですが)続けていきたいと思います。レベルは一気に跳ね上がりますが、使える技をご紹介していきましょう。もちろんプロも実践している現場の技です。第1発目のプロの技、まずは濃い~けど、軽いところから「ハンドコンプ」です。

 

コンプのようでコンプでないレベルを合わせる技

記事タイトルにたいそうな名前がありますが、誰が呼んだか、割と一般的な呼び名になっていると思います。

ミックスの時に、コンプレッサーを使うことは数多く遭遇する場面です。これには2つの効果があります。

  1. レベルを均一化する
  2. 音圧を上げる
  3. 音質、質感を変える

あれ?3つありますね。どれもコンプの役割としては正しいのですが、実は1と2はニアイコールの効果で、1のレベルを整えればボリュームが上げやすく、ボリュームを上げれば音圧も上がってきます。要は1は経過で、2は結果です(ここを勘違いしている人が多い)。なので、同様に捉えたわけです。それはさておき...

問題は3です。よく雑誌でもプロが「コンプで質感を変える」とか「ナチュラルな歪みを加えて」とか言います。もちろんVCA、オプトコンプ、真空管など、コンプの動作原理や回路によっても音質が変わります。特にヴィンテージコンプはその甘さ(ファジー感)故の効果や、通すだけで音が元気になるなどの効果を狙って、それが本物ヴィンテージ品でも、ソフトウェアでもそうするだけの場合があります。

しかし、逆にレベルを均一にしたり、音圧を変えるときに音質が変わっては困る場合があります。困るというか、変えたくないと言った方が良いでしょう。そんなときにどうしてもレベルを揃えなくてはならないときにどうするか?と考えられたのがこの方法で、DAWのオートメーションを使います。

 

ハンドコンプのやり方

まあ、やり方としてはたいしたことではありません。トラックの波形を見ながら、音も聞きながら、オートメーションの軌跡でレベルの上がっている部分を叩いて、元に戻します。つまりレベルを均一にするために、波形の大きい部分のレベルを瞬間的に抑え、元に戻すと言うことです。その逆も有りで、波形の小さい部分のレベルを上げてやることもあります。

これを必要箇所に繰り返してそのリージョンのレベルを均等にしてやれば、出来上がりです。

 

ハンドコンプの注意点

これはいくつか注意点があります。
 

 オートメーションの軌跡はマウスを使って点で書く

オートメーションは通常Faderを使って録音とともに操作して、軌跡を書くのが普通ですが、ハンドコンプは飛び出た部分を一瞬落として、元に戻すという動作が必要なため、ワンポイントで叩くなら、波形を見ながらマウスを使って点で書いた方が確実です。しかしプロの中にはコントロールサーフェース(代表的なのは、PreSonus社のFader Portとか)を使って、これをやる人もいます。手の動きが素早く正確で驚きます。
 

 1つのリージョンの中に複数のレベルをつくらない

ハンドコンプはコンプの動作レベルが一定ですので、同様に叩くならどのくらい叩くかレベルを一定に決めておいた方が良いです。本当に聴感上で一定レベルとなるように、あまりにレベルがばらばらなオートメーションを書くと、自然なコンプ感が出ないばかりでなく、MIDIのベロシティが一定であるのと同じようにつまらないものに仕上がります。

また、1トラック内に複数のリージョンがあり、リージョンごとにもレベルが違ってくる場合はもっと最悪で、複雑なオートメーションを組むとFaderによるボリューム調整がとてもやりにくくなります。他のトラックのとのバランスが取りにくく、ミックスがやりにくいわけです。FaderモードがReadの時はオートメーションを優先してFaderが効かなくなりますし、Writeは上書きですから、ハンドコンプのオートメーションは消されてしまいます。これを解決するには、Faderのモードをオフにして、マニュアル(手動)でミックスダウンの必要があります(他にもグルーピングしてオートメーションを書き足すなどでもカバーできます)。これがもし、複数トラックあるとマウス1つじゃコントロールできないことはもちろん、コントロールサーフェースが必要になることは必須です(Faderモードの呼び方はDAWによっては違う呼び方があるかも知れませんので、適宜読み替えてください)。

 

ハンドコンプの使いどころ

そうですね、決まりがあるわけではないので、どこで使うかというのは好みの問題ですが、一般的には、ボーカルに使うことは多いです。録音して波形を見ればわかりますが、ボーカルはマイクを前に吹くことがあります。息継ぎの直後ですから...といっても、そこをサクッとカットしてしまうと言葉のつながりやタイミングが合わなくなり、ボーカルに不自然さが生まれます。「耳障りでいらない部分だけど、消すと音楽性を失う」とか、「出だしのレベルが一瞬上がるような」ときに使います。

ギターでもありますね。元々ギターは減衰音ですが、歪みでパワーコードなどの場合は、頭がドンと上がることがあり、コードが変わるたびにアタックがばらつくとともに、レベルもばらつきます。これを抑えるときにも使います。

ボーカルにしても、ギターにしてもエフェクトのコンプでできることです。しかし最初に書いたように、ポイントは「音質を変えない」ところです。普通はコンプをかけると若干音質が甘くなります。それを補正するのにコンプ→EQとするのですが、へたにEQを差し込むと他のトラックとの混ざり具合が悪くなったり、ゲインや音質が変わったりします。こうしたことを避けるために、意図的にハンドコンプとの使い分けができると、ミックスの腕が上がったように聞こえます。

逆に、使わない方が良い場合というのもあります。これはドラム音などの打撃音系が代表的です。特に、ベードラやスネアは、この後にリバーブなどの処理があると、オートメーションでレベルが揺れることで、次のエフェクト効果の効きがばらつくので、なるべくエフェクトのコンプを使います。急激な減衰音(つまり打撃系の音)ではコンプでサステインを稼いでレベルを一定にする(つまりレベルの低い音を持ち上げる)ことを、頭(レベル)を抑えるの同時に行うので、次のエフェクトに安定した信号を送り、効果を際立たせるわけです。

 

ハンドコンプの効能

エフェクトのコンプとの差は「音質を変えない」ところにありますが、実はもう一つ、ミックスにとって良い効能があります。それは「CPU負荷が軽くなる」と言うことです。微々たるものではありますが、オートメーションは基本的にリアルタイムで処理するのはレベルだけです。

ですが、エフェクトのコンプでは、信号のリアルタイム処理、そのコンプ内での計算がCPUに結構負荷をかけます。特に、「全トラックにコンプは必要」なんていう人がいますが、それは時と場合によります。エフェクトは数多くなるほどCPUに負荷がかかりますので、CPUベースのDAWでは積極的に使える手段です。