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DAWのパンについて知っておくこと

2011年 04月 11日 00:36 | カテゴリー: DAW , Mix
2011年 04月 11日 00:36
DAW , Mix

本来パンとは、そこに流れてくる信号の定位を決めるモノで、左右の位置のどこに置くかを決めるノブです。先の記事「インスト(楽器)のパン設定」で、ステレオトラックのパンの扱い方を説明しましたが、もう少し知っておかなくてはならない(知っておいた方がよい)要素がいくつかあります。

 

ステレオファイルをモノ化するとレベルが3dB上がる

皆さんも経験があると思います。ステレオ放送のTV番組を見ていてコマーシャルになると音量が上がったように聞こえることありませんか?簡単に言うとこのことなんです。これは車に乗っていてFMなんか聞いていても同様のことが起こります。

答えはタイトル通りで、ステレオの2chをモノの1chにすると加算されてレベルが3dB上がります。ですから、コマーシャルの音量上がって聞こえるのはこのためで、たとえコマーシャルを見ていなくても音量が上がると、人の印象には残ります。そこを利用した音的な戦略とでも言いましょうか、まあ、これは周知の事実です。

ですから、今はやっていないかも知れませんが、昔はアーティストが新曲を出すと必ず有線放送にPRとして持ち込みました。「有線放送から火がついて大ヒット」なんてことがよくあった時代のことです。これは、レコードやCDとは別に、有線放送用ミックスというモノラル曲を用意していました。つまり、有線放送ってビルなどでは1個のスピーカーから流れることが多く、ステレオで振り切った定位の音源は鳴らないことも多くなるからです。

そしてこのモノミックスは3dB上がることから、特に印象つけられる効果を持っていたので、とても重要な役割があったわけです。

 

エンジニア業界では「ミックスはモノで確認」と言っていた

そして、レコーディング現場では、各音源のバランスを見るにはモノで聞くのが一番良いとされ、業務用のでっかいミキサーのセンターに小型のフルレンジスピーカー(代表的なのはAura Tone)が置かれて、モノで確認していたのです。

これは、ファイナライズするときに歪ませないよう3dBのヘッドマージンを取るというのが主な目的でもあり、これによりクリアで歪みのないマスタリングが可能になります。また主旋律に対するオブリガートやおかずなどのバランスを見るのには、単純にボリュームだけで操作した方がより煩雑さを和らげます。

そして時代は進み、音源もステレオ化され、ミキサー(チャンネルストリップ)もステレオ化されてきました。ここから先は前の記事のようにステレオ入力の扱い方が問題になってます。

ハードウェアのミキサーには各社いろいろな味付けがあるのですが、その中の一つに「パンの扱い方」があります。Pro Toolsのようにステレオトラックのパンが2つあるモノで、両方センターにしたら、モノラルになります(信号が加算される)から本来は3dBほどレベルが上がることになります(詳しくは次のタイトルへ)。

実際、パンというのは定位を決めるためのモノですが、左右のチャンネルに流す信号のレベルを変えているボリュームと言い換えることができます。パンを振るだけで音量バランスが変わっては他のトラックにも影響を及ぼし、うまくミックスが仕上がりません。ですから昔からミキサーを作っているメーカーは、これがコンパクトでも業務用でも、そのパンの音量の送り方と混ざり具合を独自に決めており、それが各社の持ち味となっているわけです。

 

DAWもミキサー同様にパンによる音量差がある

ハードのミキサーがそれだけいろいろ存在し、メーカーごとに味付けが違うわけですから当然DAWのミキサーもパンによる音量差はあります。

先ほどのPro Toolsに戻りますが、ステレオトラックのパンを両方ともセンターにすると、理論上は3dB上がります。しかし、実際に聞いてみるとそこまで上がって聞こえることはありません。つまり聴感上で、音量が変わらないように補正されているわけです。Pro Toolsでは、センター時に-2.5dBになるように設定されているそうです。

このパンの補正を「Pan Low」と呼んでいるのですが、ミキサーが各社あるようにDAWも各社考え方が違います。たとえば手持ちのDAWだとLogic Pro 8ではセンターが-3dBと0dBの選択ができます。DP4.6では取説に明記されていないのですが、バウンス時にセンター-3dBになるように書き出せるようですので、内部的に-3dBに設定されているのでは?と思います。新しいバージョンではちょっとわかりません。

また、DAWによってはセンターを変えず(0dBのまま)にし、L&Rに振り切ったときに+3dBになるのもあります。このタイプのDAW(知っているのはLive 8とSoner 8)だと、ミックス時にはパンを広げるとボリュームが上がるので元気な曲に聞こえる(音像が前に出る)反面、バウンス時やマキシマイザーなどを使うと歪みやすくもなります。

同様に、Pro Toolsの-2.5dBというのはセンターが理論上の補正である-3dBよりはレベルが高いので、ステレオ音源でもビートが利く(センターが前にに出る)ように感じ、LogicやDPのようにセンター-3dBのDAWでは、音量が同じなので横方向の定位がきれいに広がる感じで聞こえる、と言った癖があります。

まあ、普通の人はDAWを聞き比べるなんてことは無いと思いますが、友人同士のファイル交換などではDAW上での差がミックスにも影響してきます。ミキサー上で同じボリューム、パン設定でも、DAWが違うだけで3dBの差があるわけですから「あいつの家で聞くとなんか良いんだよな」とか、「家で聞いたよりしょぼいな」と感じることがあるとすれば、モニター環境以外にもDAWの差もあるわけです。

 

ところで「3dB」の差は大きいの?

はい、結構(プロには「かなり」です)大きいです。先のTVCMの話もそうですし、一般的に「0dB」の信号レベルの半分(1/2)は「-6dB」です。この「dB(デジベル)」という単位は対数ですから、「0dB」の半分の半分(つまり1/4)が「-3dB」です。

「ボリューム半分落として」と言われて、上がったフェーダーの位置を半分にすることが、音量の半分ではありません(これやると半分以上どころではないくらいに落ちます)。初心者がよくやる間違いです。

だからプロが触れるフェーダーは100mmと、大きいフェーダーで微妙な調整ができるわけです。コントロールサーフェースでも同じです。100mmフェーダーは、プロとしては基本です。60mmフェーダーなどはコスト重視のアマチュアレベルと思ってください。

その100mmフェーダーでなら3dBを操るのは比較的容易です。これで3dBの幅を覚えるとかなり大きいことがわかります。先にもご紹介したFaderPortなどは、100mmフェーダーを備えたコントロールサーフェースです。USBで簡単接続できますので、一家に一台あっても良いでしょう。