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イコライザーを制する者、アンプを制するーMarshall編

2018年 12月 24日 11:06 | カテゴリー: チューブアンプ , その他
2018年 12月 24日 11:06
チューブアンプ , その他

先日(と言ってもすでに1年半も経っているんですね)、第1回「プロビルダーに負けないエフェクトボードを作る勉強会」を開催しまして、ボードだけではなく、アンプとその音作りのところまでお話しさせていただきました。ご参加いただきました方も音にこだわりがあり、出したい音があるのに出しきれていなく、お悩みは尽きないようでしたが、いくつかのヒントでなんらかつかめたようで、安心しました。

あまりに時間が経っているので、前振りで前回の記事「スピーカーを効率よくドライブさせる」を書きまして、ちゃんとそれを立証してみようと言うのが今回の記事です。内容的には、前回のオフ会用に作った資料の焼き直しであり、また次回のオフ会にご参加いただいて実際に聞いていただければと思います。ですので(いつもで申し訳ありませんが)長文です。記事も分けて、久しぶりの連載になります。

でも、ご参加いただいた方の反応を見ても実践で役に立つと確信しましたので、ついてきてください。m(_ _)m

 

あえて前書き

まず、最初のオフ会では、エフェクトボードを作る際のポイントを軸にプロプレイヤーからプロビルダーに要求されるノイズ対策を中心にお話ししました。ムービーも公開しましたが実際どれだけノイズレスなのか伝わったと思います。これだけ仕上げれば、レコーディングやライブでもすぐに持っていけます(重いですが)。

で、実はボードに関しては30分くらいでサウンドチェックまで済むのはわかっていたので、続けてアンプのトーン、Marshall、Fender、Roland JC-120についてお話ししました。これは「ギター、エフェクター、アンプを含めて1つのサウンドシステムである」というのが持論、というか当たり前のことなんです。だから、なにか1つが欠けても、逆になにか1つが突出してもまとまらないのです。

もちろんこだわるところはあります。歪みに関してはブティック系のものとかであったり、コーラスはアナログなど、エフェクター1つとっても物語があるのは皆様に同じです。自分は基本エフェクターで音を作ります。フェイバリットアンプはありますがアンプは選びません。どんなアンプでも自分の音は出せます。そしてたとえセッション(現場での1発合わせ)でもアンサンブルは壊しません。ギターが2本の場合でもアンプは先に譲りますが、たとえへたったアンプが当たっても音は負けません(音量のことではないです)。

アンプのクセを知って効率良くスピーカーをドライブできれば、音量に頼らない抜ける音、迫力ある音で自分の音が出せます。そうしてアンプの良いセッティングにエフェクターで補正できれば理想の音は簡単に作ることができます。

なので、ボードの勉強会が音作りの話まで続いたのは必然でした。問題は時間だけでしたが、参加者が少なかった(ちょっと寂しい)分、好きにやらせてもらえたので助かりました。なにか話すたびに質問いっぱいでしたので、多分役に立つ内容にできたと思います。

これから出てくるのはBass、Middle、Trebleといったアンプのトーングラフです。これはあくまでも電気的特性です。ちなみにこのアプリはアンプやエフェクトビルダーによく使用されているFreewareのもので、雑誌などにも使用されることから以前から探していたのですが、やっと見つけたので、今回使用させていただきました。

このトーンの利き方を知ることで自分の音、アンサンブル内での音の作り方、もちろんエフェクターのセッティングも変わるでしょう。でも自分が気に入った音で、さらにバンドに厚みが増したら、バンドの仕上がりも格段にアップします。

 

また、ブログ内でいつもいっている「ドンシャリはアンサンブル向きではない」こと、「ミッドはガッツリ上げる」こと、「オール5がフラットではない」ことなどの理由もわかると思います。

良い機材をより良く使いこなして自分の音を確立してください。

 

まずはベーシックなアンプを把握する

自分で所有する以外はそうそう滅多なブティック系アンプなどはお目にかかれません。レンタルスタジオやライブハウスで置いてあるのは、ほぼMarshall、JC-120で、次点でFender Twin ReverbかHot Rodシリーズ、あってMesa/Boogie Dual Rectifierというところでしょうか?Vox AC-30なんかも稀です。

ですが、この中でもMarshallやMesa/BoogieなどはFenderの潮流です。両社最初期のモデルはFenderの回路を模したものや改造から始まっています。そこから、現代に至るまでオリジナル回路でモダンなモデルを排出しています。もちろん現行のモデルについては最初期のモデルを継承してバージョンアップをしてきたわけです。

こうしたベースとなるモデルを知ることで、後継モデルも似たように扱うことができます。ですので、まずは各社の代表モデルをあげて理解を深めましょう。

 

王道Marshall編

Marshallの最初期のモデルはJTM45と言われています。そしてこのモデルはFender Bassmanの回路を元にしたことは周知の事実です。そしてここから1959などのプレキシモデル、JCM800、900、JCM2000、JVMシリーズへと繋がります。いまやレンタルスタジオやライブハウスでもJCM2000あたりが常設ではないでしょうか?

例えば、モダンなモデルは昔のモデルに比べて、Middleが強く出るようになっています。この傾向はJCM900あたりから見え始めていて、JCM2000が出た時、JCM800(昔スタジオでよく使ってました)とはほとんど別物と思ったことがあります。それでもやっぱりMarshallの音がするのは、Marshallならではのトーンがあるからです。

なので基本とも言える1959あたりのトーン特性を見ていきましょう。あくまでもこれはトーンの電気的特性です。

 

Marshallアンプのトーン特性

01marshall_b5m5t5.png

さて、まずは図1です。これは全てのトーンがオール5です。ミッドのディップがおよそ700Hzあたりにあります。BassとTrebleの出力が−6dbまで上がっているのに対して、Middleは−10dbです。

この時点でドンシャリなのがわかります。ただ聴感上はMidが意外と引っ込んでいて、上がギャリっと出てきます。

 

02marshallb0m10t0.png

では、図2です。これが本来の意味の出音が「フラット」です。トーンはBass=0、Middle=10、Treble=0です。Bassが110Hzあたりからなだらかに落ちてますが、Mid、Trebleともに横一直線となり、トーンはフラットです。

これはLine6のサイトや各社アンプシミュレーターの取説でも謳われている通りです。ただ、このセッティングでは聴感上、実用にならないほどモコモコします。でも本当ならここから低音の迫力と高音の抜けを作ったほうがやりやすいはずです。

オール5から始めると聴感上でもドンシャリから作ることになるので、アンサンブル内では抜けない音を作りがちになります。

03marshall_b5m0t5.png

次、図3は図1からMidだけを0にした完全にドンシャリです。トーンはBass=5、Middle=0、Treble=5です。グラフだけ見てもドンシャリ感は伝わると思いますが、聴感上はこれでも意外と聴けます(やはりドンシャリです)。メタル系の人が好みそうなのがこんな感じです。

Bassのピークは100Hz、Trebleは4kHzくらいでのシェルビングで頭打ちしています。Midは5(図1)と比べるとディップのピークが850Hzくらいに上がっています。気持ちTrebleが落ちています。実際の聴感上はかなりブーミーでありながら上はしっかり出ているので、ドンシャリながらまだ聴ける音質です。Bassのカーブに押し出されている感はありますので、どうやらBassとMiddleのバランスで音が変わるように思います。

04marshall_b5m10t5.png

念のため図4を見てみましょう。これは図1からMidだけを10にしました。Bass=5、Middle=10、Treble=5です。Mid=0から約18dbも上がります。しかし、フルでもBassやTrebleより上がることはありません。そしてMidのディップが約600Hzあたりにシフトします。

このMidのシフトがMarshallの美味しいところで、ギターの重たいローミッドへのシフトがMarshallの迫力を生み出すわけです。そしてど真ん中のMidが薄れることでギターがうるさくなることもなくなります。

一部にディップを作ることでその両端がはっきりとしてきます。つまりMidは600HzあたりをディップしてBassとTrebleで迫力と抜けを作るのが、アンプを使い切るヒントです。そしてこれがクリーンとクランチでも聴感上の聴こえ方が変わってきます。

05marshall_b4m9t55.png

次の図5は僕がよくやるセッティングで、Bass=4、Middle=9、Treble=5.5です。これは基本クリーン時です。もちろんヘッドの状態にもよりますが、Treble=7くらいから下げていきます。4くらいまで下げることもあります。Bassは4〜6の間でスピーカーの具合にあわせます。

当然ながら、これらのトーン特性はあくまでも電気的特性ですので、聴感上はどのセッティングでも違います。大きくはエンクロージャーとスピーカーによりますので、アンプだけでなくキャビネットも見なくてはなりません。

 

スピーカー特性

前述の通り、1959のトーンは説明しましたが、今、そんなヘッドを置いてあるスタジオやライブハウスなどなく、JCM2000などが一般的ですので、そうしたモダンなアンプはもう少しMid(またはMid Low)が強いと思って調整してみてください。

そして第2のトーンファクターであるスピーカーです。ここで取り上げるのは1960Aに使われているCelestine G12-T75です。

06celestion G12T-75.png

図6のグラフを見る限り、レンジは80Hz〜5kHzほど、下は150Hzあたりから落ち始め、1.5kHzあたりに大きめのディップ、ピークが2.3〜2.7kHz周辺、上は5kHzから急激に落ちます。

これをアンプのグラフに当てはめて考えると、Bassのピークである100Hz以下は上げるだけ無駄というか、スピーカーに負担をかけるブーミーな音質となりかねません。同様にTrebleは5kHzピークなので、1番耳に飛び込んでくる2〜5kHzあたりがうるさくなります。

つまりスピーカーの効率を考えると、BassもTrebleも上げすぎは全く意味のないことになります。まあ、聴感上はたしかにそれ以下、それ以上も鳴っていますが、稼働効率ではスピーカーに無理をさせるし、ある程度音量もあげるとラウドネス効果も加わってきたり、Presenceもあるので、上と下には少々の味付けだけで、過度なブーストは必要ないでしょう。

 

EQ補正

図5のセッティングで基本的な音が出来上がってますので、これにEQで補正します。

このセッティングですと、ぶっちゃけロックな音はしません。ちょっと迫力にかけます。まあ、クリーンの音量ですから、同じように効率良いセッティングにするとアンプの差が出にくくなります。ですから、僕自身がアンプを譲って、へたったアンプでも自分の良い音を出せるのはこれが理由です。

ですが、僕自身ロックは好きで演りますし、歌謡曲のような歌モノでもこなします。それがエフェクターでの味付けです。

そしてもちろん歪みや空間系など、使いたいエフェクターにこだわりもあります。しかし、単発機として頼ることはありません。今はPC Triple Cのパッチケーブルなので、どんなエフェクターを使っても音質の劣化がなく、Bossのエフェクターでさえ太い音がします。ちなみにBossのエフェクターって結構レンジ広いです。ハイエンドなパッチケーブルでもBossのレンジの広さを感じることはできません。だからBossを使っていてもBossの音がしない、Bossとは思えない音がします。特に空間系では顕著に差が出ます。

話しを戻して、そのボードのちょうど中間にEQを入れています。歪みの後、モジュレーションの前です。ここでは歪み系の補正という形ではありますが、実際はアンプの補正です。なぜなら、僕はノーマル音のソロ、カッティング、歪みのバッキング、ソロと全部使うからです。要するに、このEQは常時かけっぱなしです。以前はTC Electronics 1140だったか、プリアンプ/paraEQを入れてました。

で、ロックな音作りに必要な箱鳴り感は250Hzあたりを結構ブーストします。アンプにもよりますが、+8〜12dbくらい思いきってあげます。パライコなので、Q幅はアンプのBass(100Hz)にかぶるくらいにします。これで、パワーコードなんかをブリッジミュートして弾いてみてください。結構ゴンゴン鳴ってくれます。

これは前回のオフ会でも証明済みで、参加者も驚いていました。でも考えると簡単なことで、スピーカーのドライブ効率に、可聴帯域に十分に入ってくるローミッドです。耳あたりが良く、ギターらしい厚みが作られます。だから十分にロックな音が出ます。

これ、グライコでもできるの?と聞かれましたが、たぶん250〜300Hzのスライダーがあればできます。200Hzだとちょっと低いので100Hzに当たるアンプのBassも少し下げなくてはブーミーになるだけです。ここら辺の調整が200Hzを持つグライコだと難しいところです。そして、スライダーはピーキングなので、うまくBass域と混じってくれればOKです。グライコでのコツは、アンプのBassを少し下げる方向に調整して、グライコを馴染ませることです。こう馴染ませるためにパライコのほうがやりやすいんです。

もう1つついでに言うと、こんなにゴンゴンいらないというか、ここを少しずつ下げていくと箱鳴り感がうすれつつもアンプ感が失われるわけではなくコンボアンプのような感じになるため、ブースト量を抑え気味にすると、厚みがアンサンブルの邪魔をせずに歌モノのバンドにも馴染ませることができます。この「250Hz」あたりってこんな魔法のような帯域なんです。

次は意図的にやって効果のある帯域です。それが4.5kHzあたりの軽いブーストです。前述のグラフでも見てわかるように、Trebleが4kHzで頭打ちで、スピーカーで5kHzから急激に再生域が落ちます。その間を埋めるように軽いブーストをかけるのです。

すると高域のざらつきがなくなり、ハリが出てきます。しかもこのくらい上なら女性ボーカルともぶつからないのです。耳に入りやすい帯域ですので、ブーストしすぎには注意です。あと歪みのセッティングによっては、すぐにハウります。つまり、調整次第でフィードバックが思いのままにできるのです。

なので、ここを突く場合は歪みの調整も必要です。強い歪みが必要ないのです。この効能は歪みの量を抑えることで音が太くなり、歪みの種類でも自然にフィードバックに持っていけるのです。推奨はチューブアンプの歪みに近い、柔らかめのオーバードライブです。強い歪みのゲインを絞ることで、その分ノイズを抑えることもできるのです。

アンプのPresenceは元々パワーアンプ側(つまりプリ側ではない)なので、3〜4くらいにしておくと、余計なノイズをもたらすこともありません。Presenceはおよそ8kHz以上ですからスピーカーの再生域も外れるのであまり上げるのは好ましくありません。

この「4.5kHz」あたりの軽いブーストでハウリングが起きまくる、ギターを弾かずに押さえているだけでピーピーなるなら、簡単にいうと歪み過ぎか、歪みのトーンを上げすぎが原因です。つまり高域についてはアンプである程度良い音ができているということですので、過度なエフェクトが必要ないのです。

もう1つのポイントはフィードバック誘発の4.5kHzとは逆に、絶対にハウらせたくないのなら1.6kHzをディップします。ここはスピーカーを見てもわかる通り、スピーカー自体がそんな特性を持っているので、音質が変わらない程度にディップさせると良いです。

ただ、この1.6kHzはアンサンブルでは男性ボーカルの帯域なので、落とすとぶつかることはなくなりますが、いわゆるフィードバックポイントと捉えるなら抜けが悪くなるという、矛盾したポイントです。ですので加減が必要になります。こういうときはかえってグライコの方が便利です。ピンポイントでレベルだけの調整ですから。パライコだとQ幅で周辺の周波数も拾ってしまうので、このポイントならグライコ向けです。