アンプシミュレーター

Podのデジタル臭さを何とかするーレコーディングの場合ー

2011年 10月 15日 21:57 | カテゴリー: アンプシミュレーター
2011年 10月 15日 21:57
アンプシミュレーター

そもそもPodはレコーディング用のツールです。有無を言わさず、そのまま使えばいいのです。ですが、音作りってそうはいきませんよね?最近の黒豆シリーズはHDになりまして、確かにアンプの再現性は高くなりました。でも、空気感やアンプの知識なしでは、やっぱりいい音が作れません。これはアンプを使えてないのと同じことです。

また、レコーディングになりますと、録音後のテクニックもあって、時には思い通りの音やそれ以上の音ができるときもあれば、音は良いのにオケに入れると合わないとか、馴染まないとかも良くあることです。

レコーディングに関しては、最終の仕上げ次第でアプローチの仕方が全然変わってきます。もちろん正解はこれ!というものはありません。ですので、音を作る際のアプローチ次第でどうにでも変わるので、ここではタイトル通り「デジタル臭さを何とかする」ことを重点にお話ししましょう。

 

基本的な音の作り方

「Pod X3 音作りのヒント その2 モデルセレクト」や、「Pod X3 音作りのヒント その3 音質調整」でも大体書いていますが、基本となるアンプモデリングの調整はこの記事のように、最初に調整します。つまり、アンプを仕上げてそれから味付けです。

取説にあるPodのシグナルダイアグラムを見るとわかりますが、MOD/DLY/VERBの3つがアンプの後ろに来ていますよね?これがPodのレコーディングツールと言える所以ですが、レコーディングスタジオでの録音のように、アンプ→キャビ→マイクを通って、Volがあり、MOD/DLY/VERBと続きます。まさに普通のレコーディングスタジオで行っている録音状態をシミュレートしています。

ここでの考え方は、キャビ直後のCOMPとEQは動かせないからしょうがないとして、MOD/DLY/VERBをかける必要があるかどうかです。こうした空間系はレコーディング現場で言うと後掛け、つまりミックス時に卓でかけることが普通です。もしかける必要があるならば、たとえばフランジングサウンドや、ジェット効果などは普通はギタリスト側でコントロールして掛け取りします。このときは、エフェクトをアンプの前に持って行きます。つまりPostエフェクトをPreエフェクトにします。

こうすることで、普通にコンパクトエフェクターをアンプにつないでいるのと同じ状態を作ります。Postエフェクトの場合、卓と同じ状態でかかるので、非常にクリアにかかります。これが良い場合もあるのですが、ディレイなどは曲のテンポに合わせたり、リバーブも他の楽器と同じ空気感を出すのに、DAW上で合わせてかけてやる方がクリアかつ、一体感が出ます。

またプロが良くやる手は、Podでショートディレイ(1~3回の戻り)を掛け取りしながら、ロングディレイを曲のテンポに合わせて卓(DAW)側でかけてやるということもあります。こうした場合も、掛け取りするショートディレイは、アンプの前で突っこんで、若干歪みを与えた(この場合の歪みは、ディストーションの意味ではなく、スピーカーを通したちょっとローファイな音という意味です)ほうが、よりギターらしい響きを出します。

考えてみてください。ライブなんかで足下にエフェクターを用意している人が、マイクの後ろにコンパクトエフェクターをつなぐなんてことは無いわけです(普通は空間系を卓任せです)。ですから、Postエフェクトにすること自体がデジタル臭さを自分で作っていることになります。

基本的な音作りは、ちゃんとシミュレートすることから始まります。これは黒豆でも同じです。

 

問題はアンプ直後のCOMPとEQ

Podでの録音はライン録音ですから、ラインの特性を知る必要があります。受け側は基本的にフラットで、可聴帯域の20kHzまでカバーします。ですから、問題は出力(送り側)にあるわけです。中域が出るギターではそのまま録音されます。

前回の「Podのデジタル臭さを何とかするーアンプへの出力の場合ー」で書きましたが、いくらキャビの後にマイクがあるとは言え、Podの出力自体が20kHz以上(サンプリング周波数が44.1kHzの場合は可聴帯域で22.05kHzです)ありますから、堅くなることは避けられません。ですから、録音では後処理(ミックス)でずいぶんと音が変わります。これを考えると、一番ギターらしい中域たっぷりの音を作ることが、ヒントです。

言い換えれば、極端な話、堅くなるような抜けをPodで作らなくとも、ギターらしい音を作っておく方が加工しやすくなるわけです。男性ボーカルや女性ボーカルでも太さが出る部分でギターとぶつかりますから、上げることも下げることもできるような音作りが望まれます。その音の作り方が、COMPとEQでカバーするということです。

Testtone.jpg

テストトーンを作ってみました。説明すると、アンプはMarshall JTM45に1967 Green 20というMarshallのキャビです。これをクランチ気味してみました。マイクはSM57のOn Axisで近接効果を狙って5%まで寄せたものです。これにCOMPを軽く掛け、EQを大胆にかけます。

COMPはTeletronicsのLA-2Aのモデリングです。これはコンプですが、レべラーとも言われています。つまり、ギター全体の音を均一なレベルに調整するコンプです。1960年代後半までに作られていたOptoタイプのコンプで、コンプと言うよりリミッターのように使うことが多かったものです。そのためパラメーターも少なく、扱いやすいものです。当時のサウンドを考えるとアンプの歪みも、今のハイゲインもない時代ですから演奏による抑揚の幅が広いため、録音で歪ませることはできずに過大入力を抑える必要がありました。この使い方で大活躍していたものです。

Testtone_comp.jpg

なので、たとえ真空管アンプで歪ませてサチュレーション感が出ても、このCOMPである程度つぶしてEQの効きを良くするくらいにかけても良いと思います。これで-40dbまでつぶすとかなり前に出てきます。つまり全域で均一と言えますが、抑揚が薄れるので、軽めにしました。

EQはかなり好みが出ますので、一例として捉えて欲しいのですが、最終段に当たるマイクの特性をシュミレートしてみるのが一番早道です。とは言っても通常のEQよりもPodのEQは設定範囲が狭いので、注意が必要です。まあ、ある程度マイクのモデリングでシミュレートされていますので「より強調する」と思って良いでしょう。EQは4バンドありますが、一番下と一番上がシェルビングです。中2つはピーキングです。

Testtone_eq.jpg

SM57は40Hz~15kHzですので、50Hz以下を大胆にカット(マイナスゲイン最大です)、SM57の第2ピークである9kHzあたり(最高域です)を結構カット。ライン臭さを取るのに、960Hz(まあ1kHz前後)を少々カットしています。結構大胆なカーブを描いていますが、これで実際の音を聞いてみると、あんまり変わらないんです。EQをオン/オフして聞いてみてください。

ですが、録音後、ミックス時に大きく変わります。まず、低域がベースとかぶる部分が抜けているので、ベースラインがはっきり見えやすくなります。そして、上はさほど耳障りな高音がないので上物とかぶらず、中域を抜いているので、ボーカルとも差がはっきりします。中域はこの辺がライン臭さがある部分なので、ボーカルの帯域を見ながら前後させ、レベルを抜きます。

こうした聴感では影響ないEQ具合が、ギタリストも演奏しやすく、またミックスもやりやすく、ライン臭くないギターらしい中域を保ったサウンドができます。あくまでも一例ですが、ポイントは聴感上で変わるようなEQ具合を作らない(マイクのシミュレートを強調させるととってもい)ことと、アンプでは十分に中域を保ちながら、最終段で気持ち中抜きにすることが、ライン臭さを出さないコツと言えます。