アンプシミュレーター

Podのデジタル臭さを何とかするーアンプへの出力の場合ー

2011年 10月 11日 00:58 | カテゴリー: アンプシミュレーター
2011年 10月 11日 00:58
アンプシミュレーター

ご無沙汰しました。この記事、やけに脱線して文章がまとまらず、何日もかけて書いています。いつものように書いていくといくつもの記事になるので、まとめたいのですが苦戦しました。久しぶりに文章スランプです。
 


「Podってデジタル臭いよね」とか、「Podのライン臭さどうにかならんのか?」というのは、ちまたでも良く聞く話です。まあ所詮デジタル楽器といえばそれまでですが、元々が録音用の機材です。なのでレンジの広さが問題になることもしばしばあります。

今回は、理論的な話ではなく、もっと直感的に、話をかみ砕いて説明したいと思います。

 

アナログ懐古論

先に言いましたが、元々は録音用の機材です。ドライバーをみても、24bit/48kHzというハイビット録音にも対応しています。CDの16bit/44.1kHzという基準値からみても、よりいい音で録音ができると言うことです。

ところが、最近のオーディオインターフェイスなどは24bit/98kHzが当たり前で、既に24bit/192kHzなんてコンシューマー(割と安めの一般的な民生機)な製品もあるくらいで、プロですら192kHzなんて使うことは、そうありません。

このハイビット/ハイサンプリングレートはもちろんアナログに近づけるように分解能が細かくなるのですが、音はハイファイになるものの、音が細くなる感じを受けます。特に昨今ではこうしたハイファイが嫌われ、アナログ懐古とでも言いましょうか、テープコンプとか、真空管の暖かみとか、特にこの楽器業界では、顕著にアナログへ戻るという不思議な現象が一般的です。

昔は「よりいい音へ」と技術革新してきたのに、音だけは昔に戻るって変な話なんですが、現にそうなっているのは「昔の音の方が耳さわりがよい」ことを知っているからに他なりません。

 

最終段のDAコンバーター

Pod X3では最高24bit/48kHzで録音できますので、これは結構いい音です。ちなみにVox Tone Lab STはといいますと、24bit/44.1kHzです。これもCD以上の音です。しかし、これらは最終段のDAコンバーターによって音が定まります。オーディオの世界では、味付けのないハイファイかつストレートなDAコンバーターが求められるのですが、楽器の場合にはこれがデジタル臭さを醸し出しています。

Pod X3はDAコンバーターとしては結構優秀な方だと思います。Lineで出力する場合とUSBで出力する場合で、割と差がありません。これは前述のオーディオのようにDAコンバーターに味付けがなされていない、ストレートな音を出していると言うことです。

Vox Tone Lab STはひと工夫ありまして、(たぶん)最終段のすぐ手前に、Filterが用意されています。これがAMP/LINEスイッチで、VOX/F(Fender)/M(Marshall)/Lineと切り換えができます。このスイッチがUSBの出力にも効くので、各アンプ向けに見合うフィルタリングがされて出力されます。このFilterの設定(プリセットなので変更はできません)が、結構絶妙でいわゆるLine臭さ、デジタル臭さを和らげてくれます。Lineにするといかにもデジタルのバキバキした音が出てきます。

Pod X3では、アウトの変更はインピーダンス調整だけのようで、一応Pod X LiveまたはProならLive OutとDirect Outが用意されています。これを内部的にLiveモードに変更するとスピーカーキャビの設定(スピーカーとマイク、ルームシミュレーション)が切れるようです(このLiveモードは空豆X3にもあります)。ですが、これでは余計Lineそのままの音になりますので、めちゃめちゃ堅い音が出力され、それこそデジタル臭さは抜けません。

 

アンプへの出力の場合

特にPod X3 Liveユーザー(要はフロアタイプ)には多い悩みでしょう。フロアタイプで持ち歩けるだけに、家でセッティング決めてスタジオに持ち込むのは、常套でしょう。

この場合、根本の考え方から変えなくてはなりません。最初にアンプで音を作って、それからエフェクト(Pod)を足すという考えです。Podに限らず、アンプシミュレーター全般に言えますが、家で音作りしているとどうしても堅い音になりがちです。特にCDを聞きながらあこがれのミュージシャンと同じ音が作れないと悩んでいる人は堅い音の傾向があります。

なぜかというと、当然のことながら曲内で全部の楽器のバランスを取るため、抜けを作るのにレコーディングで音が作られるからです。もっとぶっちゃけて言うと、たとえどんなマイクで取ろうとアンプの音がミックスの時点で全く違う音にエディットされるからです。もちろん一流のプロでは元の音のニュアンスを残してミックスしますが、全くいじらないと言うことはまずありません。

ギターアンプの出力は、そのスピーカーにもよりますが、上は5~8kHzまでしか出ていません(正確には極端に減衰しています)。オーディオのように20kHzまで出ているスピーカーなんてないんです。これをたとえばSM57で録ろうとすると、周波数特性が40~15kHzで、200Hz以下がなだらかに減少、ピークが5~6kHzで、第2ピークが8~9kHz、10kHz以上は極端に減衰しています。ちなみにマニュアルには音源に6mmまで近づくと近接効果で100Hz以下が6~10dBほど上がるそうです。

なので普通のセッティング(Podでいうなら57のOn Axisで、2~8%程度)にすると、レコーディングされる生音はおよそ80~8kHz程度ですが、マイクというフィルターを通るので、これが80~12、13kHzくらいです。さらにこれが16bit/44.1kHzのオーディオI/Fで録音した場合、実音はサンプリング周波数の半分ですから22.05kHzで再生されます。わかりやすく引き算にすると、22.05kHz―12kHzで、上の10kHz以上がいわゆる空気感とか、耳に聞こえないけど感じることができる音になるわけです(厳密に言うとこんな簡単ではないのですが、わかりやすくという意味でのたとえです)。つまりこれが堅くなる原因でもあります。

なので、ギターアンプでの再生を考えると10kHz以下の出音で、そこに収まるように音を作るとギターアンプ本来の音になりやすくなります。まあ余計なもの(上の周波数)突っこんでも出ませんし、実際には鳴っているんですが、耳には届きません。だから堅い音作ってそこを無視される音質では聞こえなくても感じる音質ですから、デジタル臭くて当たり前なんです。

もう一つ、ギターアンプの性質は基本的にドンシャリです。最近のMarshallではずいぶんとミッドが出ているものが多くなりましたが、基本は中抜けの味付けがなされています。なので、いつも言っていますが、アンプのMiddleコントロールを上げておかないとギターらしさが損なわれます。たとえばFenderのTwinReverbあたりは、Mid=10、Treble=3~4、Bass=2~4くらいでようやくフラットになるアンプなんです。MarshallのJTM45あたりも似てますね。

これらの設定はギターが中域を司る楽器であることから来ています。なので、Pod上でも800~1kHzくらいまでを少々ディップ(減衰)させると、ライン臭さというか、アンプの中域の増強で、デジタル臭さが薄れてきます。つまり中域に関してはアンプで音を作るようにして、送る側(ギターやエフェクター、もちろんPodも)では、少々抜いてやることで、よりアンプらしさが浮き立ちます。Trebleは抜けが出る程度、Presenceは上げすぎてもだめです。Trebleに添える程度にすると、ギターの芯も出ながら、抜けも作れます。

前にも書きましたが、Liveモードで、Power Amp直を勧めない理由はここにもあります。堅すぎるんです。Directモードでマイクとキャビをオンにしても実際に聞くとこもるように聞こえますが、それでもアンプにとってはまだ堅いというのがおわかりいただけるでしょうか?先のVox Tone Labの出力選択スイッチがアンプごとに分かれているのは、それらのアンプに見合う出力フィルターをかましているのです。だから意外と使える音が作りやすいんですね。

そもそもレコーディングツールとして作られたものなのでLiveシリーズ(フロアタイプ)はもっと考えて作って欲しかったですね。どれも同じエンジン使っても良いけど、特にLiveシリーズはアンプの特性を考えて欲しいです。

話を戻して、結論としてPodをアンプに入れるときは、まずアンプで音を作ることを前提に、Pod側で高域をガンと落とし、中域を軽くカットして、アンプでそこを補う設定というのがポイントです。そして家でも作りすぎないことで、音作りはアンプで鳴らしながら作るようにしてください。