
POD X3 音作りのヒント その2 モデルセレクト
アンプシミュレーター
2. PODでのモデルセレクト方法
PODはアンプシミュレーターとしてよりも、実際はレコーディングルームシミュレーターといった方がいいかもしれません。やはりLineでステレオ出しが一番効果的なんです。ですから、CDなどと組み合わせて練習したり、DAWに直接録音というのが一番適した使用方法です。
PODでの音作りは複数のエフェクターを組み合わせることで、複雑になっていきます。これはどうしても避けられないので、最初はアンプモデルを構築します。このときのモニタリングはLineまたはHeadphoneが適切です。
アンプモデルのセレクト方法
最初に理解しているアンプ、使いやすいアンプから始めてみてください。それがだめなら好きなアンプに近いアンプ、目標とするアーティストが使っているアンプなど、自分の感性に合うアンプが自分の音を作ります。全く違うアンプを使用するときは当然求める音も違うわけですから、そう迷うほどではないでしょう。ただし、マニュアルだけはしっかり読んで実機やモデリングの癖(たとえばモデリングしたチャンネルなど)を把握してからセレクトします。
POD X3のアンプモデルでのだいたいの特長をつかんでください。基本的にはマニュアルの各モデルの写真にあるように、アンプモデルには搭載されたスピーカー(キャビ)を使う事を前提とします。たくさんあるモデリングのベースモデルをざっくりまとめると以下のような感じになります。
- 小型スピーカーを有するヴィンテージアンプ(Fender Champ、VOX AC15、Suproなど)
これらは、ドンシャリと言うよりシャリのほうが強めのアンプです。低音域を出すのは意外と難しく、たとえキャビに4x12を選んでもこもるだけです。
- 30W~50Wクラスのヴィンテージコンボタイプ(主にFender系、VOX AC-30など)
基本的には、歪みが極端に多いモノではなく、ドンシャリな特性を持つアンプです。クランチ系がもっとも得意で、ブルースやコードでジャカジャカやる最近の日本の楽曲には合う感じです。
- 現代のモダンコンボアンプ(Matchless、Buddaなど)
もともとVOX AC-30あたりをベースにしたClass AまたはA/Bアンプなので、ヴィンテージコンボに似ていますが、Midが豊かです。ギターの特長を生かしたサウンド(ストラトならストラトらしさ、レスポールならレスポールらしい、という感じ)を得るにはもってこいのアンプです。
- 50W~100Wクラスのヴィンテージヘッド(主にMarshall系Plexi、JCM800まで)
もちろんFenderなどよりは歪みは強いモノの、基本的にはドンシャリ。調整によりMidは自在。前段にブースターを噛ましてソロという実践的なセッティングには適したアンプ。そのときに前段のエフェクター(これは内蔵、外部に関わらず)でも色づけができるので、音は作りやすい。
- 1980~90年代のモダンハイゲインアンプ(Boogie Mk II、JCM900、Soldano SLO-100、強いてPeavey 5150くらいまで)
初期のモダンアンプはハイゲインで、中域が多くなっています。歪ませるのはOKですが、基本的に歪ませれば歪ませるほど、音は細くなるところをMidで補正するという考え方が妥当です。
- 現代のモダンハイゲインアンプ(Marshall JCM2000、Mesa Boogie Dual Recitifier、Diezel、Bogner、ENGLなど)
前出のモダンアンプとの境目が無くなってくる機種が多いけど、ハイゲインに磨きがかかり、さらに音痩せもなく、Midが強いアンプ群です。
キャビネットモデルのセレクト方法
まずは選んだアンプモデルに推奨のキャビモデル(マニュアルに写真が載っているやつ)を選んだ方が音をイメージしやすいです。
ロック系の大音量による箱なり感にはでかいキャビが必要です。4x12を中心にスピーカー違いで選んでいきます。1発や2発キャビではやや出にくい傾向があります。逆にインスト、Fusion系では1発もの~2発ものへと変更していけばいいものにあたります。搭載スピーカーもわかると選びやすいのですが、アンプ同様に聞いて覚えるのが一番です。
実はPODのキャビリストを見ると現物はキャビこそ違えど、同系統のスピーカーを使用しているものもいくつかあります。
たとえば現物アンプで小口径アンプのほとんどがJensenスピーカー、Fender系のアンプに搭載された12インチもほとんどがJensenスピーカー、4x12インチは全部Celestionスピーカー(G12M-GreenBack、G12T-75、Vintage30)だったりします。
- 現物Celestionスピーカーの特性は8kHz以上が極端に減少しており、ピークは2.5kHz付近です。特にVintage30は120Hz以下がなだらかに減少します。まあG12MやG12T-75に比べて低音が出にくいスピーカーです。
- 現物12インチJensenスピーカーの特性は型番で細かい違いはあってもだいたいが5kHz以上が出なくて、ピークは2.2kHz付近です。80Hz以下が極端に減少、400Hzと1.5kHz付近にディップ、1.5kHz~4kHzが他の帯域より+10dBもレベルが高い(高音が出る、堅い)という仕様。
簡単にまとめると、10インチ以下の小口径モデルは結構堅く低域のない音、1~2発の12インチもそこそこ堅め、4x12は低音から高音までレンジが広くとられたスピーカーとなります。
あとはキャビネットがオープンバック(1~2発のスピーカーを搭載したモデルに多い)であれば割とスピーカーの特性に近い状態、クローズバック(4発のスピーカーを搭載したモデルはほとんど)なら低中域がやや盛り上がる感じでフィルタリングされます。
こうした癖を理解すると格段に音は作りやすくなります。こうして様々な音を理解することでCDからの音や自分で欲しい音が理解できてくるので、後は数を聞いてこなしましょう。
マイクモデルのセッティング
アンプとキャビネットの組み合わせが終わったら次はマイクです。ギター録りの定番であるSM57でオンの状態から始めてください。デフォルトは50%ですが、これ以上離すとこもるだけですのでオン(0%)から徐々に離していきます。
ただし、この距離を決めるときはアンプのセッティングが終わってからです。それまでは基本的にオンの状態のままで音作りをします。この方がアンプの出力に近く、マイクの癖や空気感などを後で加味した方がわかりやすいからです。